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    shidarigawa

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    shidarigawa

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    年齢操作大人の帰ってこないフリーライターアラタシンネタです。同棲(結婚?)してる同軸リバっぷる設定。支部のとネタ被るお話です。復カで帰ってきたから便乗供養。モブ整備士目線。健全!

    整備長は憂鬱「整備長の碓氷アブトです。よろしくお願いします。」
    「よ…よろしくお願いします!」

     極秘である超進化研究所に整備士として配属の決まったオレは、その説明を受けて驚いたものの、自分の力を認められたことはもちろん、ロボットに変形する新幹線を整備する、という夢のような業務に心躍らせ4月の初日を迎えたのだった。
     そしてそこで出会ったのが、オレよりも、もしかしたら若いかもしれないような上司、碓氷アブトだった。
     この男そもそも顔が良い。顔が良すぎてちょっとたじろぐレベルなのだ。
     日焼けしないきめ細やかな皮膚に、整った目鼻立ちは少し冷ややかにも見えるが、声を発すると、その感じは消える。ヘルメットに僕たちの青色のツナギとは違う特別な薄紫のツナギ、安全靴という出立ちにしておくのがもったいない気もするが、その格好が似合っている。
     そして、妙に色気がある。
     何が、と言われたら、オーラというか身のこなしというか…。
    「碓氷さんてすげぇ天才で、かつてはダークシンカリオンに乗ってたらしいな。それどころか、10歳かそこらでシステム開発もしてたらしい。」
     一緒に移動になったやつの情報に驚く。運転士は年端も行かない少年少女、というのは聞いている。整備士は彼らを守るためにシンカリオンのメンテナンスは元より、安全対策と機体の出力をあげ、負担のない戦闘のための研究にも努める。
     とりあえず、整備長への尊敬と畏怖はMAXとなった。




     移動から半月あまり…。だいぶ慣れたかというと、今、整備長が隣にいるので緊張してクラクラしている。というのも、この半月大量の資料を渡され、現場で知識を叩き込まれ、ヘトヘトだったのだ。
     整備長は点検場所を指差しながら、細かく説明していく。
     天才のスピードには早すぎてついていけない部分も感じる…とはいえ、すべてがおもしろくて、日々業務にのめり込んで寝る間も惜しんで勉強してしまっている自分もいるのだが…。
     碓氷整備長は軍手を取ってPCからデータを呼び出す。
     あれ…指輪してる。
     左手の薬指…だと…??
     …あれ、なんか目の前が回り始めた…??
     朦朧としてくる意識の中で、整備長の声が頭に音声としてだけ届く。だめだ。視界がなんだか暗くなってきた…。
    「ここの出力は…、っておい!」
     背中をガシっと支えられる。おかげで後ろにぶっ倒れるということはなかったが、整備長の顔が近い。いや〜顔が良いな〜…じゃなくて。
     点滅する思考の中で、支えられた肩に回った左手に光る指輪が目に入る。彼女かな…そうだよな…こんだけかっこよかったらほっとかれないよな…いやいや、何を考えているんだオレは…。そこで完全に意識が途切れた。


    「貧血と睡眠不足ね。」
    気が付いたのは医務室だった。もう日が暮れている。今まで寝てたってことか…。
     美人の女医の久留米さんに厳しく健康管理について注意され、鉄分の錠剤をわたされる。
     久留米さんの連絡により、しばらくすると、医務室のドアがあいて、碓氷整備長が顔を出す。

    「すまなかった…無理させてたのに気がつかなかった」
    暖かい缶コーヒーを渡される。
    「いえ、僕が自己管理できなかったんで…」
    なんとなくしょんぼりしている整備長の姿に焦る。
    「この子は自分のペースで他人もできると思っちゃうところがあるからね。無理な時は無理ってはっきり言いなさいよ?」
    久留米さんが、整備長の頭に手を置いてぐりぐり掻き回す。
    「やめてください久留米さん」
    と言いながらも、表情は変えず何度も謝られてしまい、逆に自分の不甲斐なさと倒れてしまった気恥ずかしさに落ち込んでしまう。
    「碓氷くんも、最近仕事に打ち込みすぎよ…彼なら大丈夫よ。来週帰国予定なんでしょ?」
    「はい…」
    やっぱり整備長がぼんやりしている気がする。オレたちに接している時はキビキビして、真面目で、注意深くて、完璧に見えるのに、そこではどこか虚で憂鬱で寂しげに見えた。


     そのまま帰ることになった僕だが、なんとなく、てっぱくの屋上に来てしまった。昔からここが大好きで、両親にてっぱくに連れてきてもらったときは何時間もここで新幹線を見ていたことを思い出す。
     24時間勤務体制であるここの職員は、いつ何時でもここに来られるのが本当に役得だ。

     すっかり日が落ちた中、北陸新幹線が連結して走り去って行く。
     ガタン、と音がして、誰かが屋上に来た。
    なんとなく誰とも喋りたくなくて、建物の影にしゃがみ込む。この暗さなら見つからないだろう。
     薄紫のつなぎが目に入る。整備長だ。高架の1番近くに寄って、新幹線がくるのを待っているようだ。僕とおんなじだ。
     出て行って話しかけようか、と逡巡していると、
    バタバタと音がしてまた誰か来たようだ。なんだか騒がしいけど誰だ…?

    「アブト!!」
    走って来たのか、息が上がっている。
    「シン!?」

     そのままその人は真っ直ぐ整備長に向かっていき、思いっきり抱きついた。
    「ただいま!」
    「えっ、お前なんでここに…?!」
    整備長は驚いて抱きついてきた人物の腕に手を添える。
    「驚いた?色々あってさ、帰国予定が1週間早くなって…ん〜まぁサプライズだよ〜!」
     ずいぶん仲が良いみたいだけど、いったい何者…?閉館後にここに入れるのは関係者しかいないはず。
    「……おかえり。」
     思いがけず優しい声の整備長に目を見張る。2人は相変わらず抱き合ってくっついているのがライトに照らされて見える。
    が、急に相手があわてはじめた。

    「つっめた!!!ちょっちょ、まてくすぐったい!やめて!本当にこんな所で〜あーー!やめて!」
    「シン…お前なぁ、20日も連絡途絶えて!死んだんじゃないかって心配したんだからなぁ!!」
    「ごめん!本当にごめん!PCとスマホ水没したんだよ!めちゃくちゃ色々あったんだって!」
     身を捩って逃げようとするその男は、紺色にピンクのラインが入ったマウンテンパーカーに、少し長い緑の髪を後ろにひとつに結えている。オシャレな若者って感じだ。
    「だとしても、どこかで国際電話入れるとか、誰かに借りるとかできただろ?!」
    それにしても、普段冷静で的確な指示をだしている整備長が大声で怒りながら、子犬のように戯れ合っている様は、年相応、というかむしろ少年みたいで、そのギャップに驚く。なんかかわいい。

    「連絡もなくいなくなる辛さがわかっただろ!?」
    ピタッと整備長の動きが止まる。
    「あ…アブト?」
    「すごく不安だったよ」
     そう言って相手の胸に顔を埋める整備長の姿がぼんやりと見える。見てはいけないものを見てしまった気がして、胸が高鳴る。花壇の影に小さくなる。
    「お前がいなくなったらどうしようって心配した。お前と連絡つかなかったのは、たった20日。オレは半年だ。」
    「ごめ…ん…アブト…連絡できなかったのは、わざとじゃないんだよ。本当色々あって…できるだけ早く帰ってきたんだ」
    相手の男も整備長の背中に手を回している。
    「わかってるさ。帰ってきてくれて本当に良かった」
    「ごめん!ごめん!アブト本当にごめん!
    次からはちゃんと連絡できるようにするから〜!!」
    慌てて、もはやちょっと半泣きでそいつは整備長に謝り倒してぎゅうぎゅうに抱きしめている。

    「わかったならいい。てかくるしい。あ、来た」
    新幹線が通るゴーーッという音のせいで声が聞こえにくくなる。
     ぐい、と男を押しのけて、通り過ぎる新幹線に釘付けになる整備長。
     なんなんだこの2人。そうとう仲が良いというのは分かるんだけど…。

     …と思いきや、2人の顔が近すぎない?あれ、キスしてない?????

    ドキドキして姿を隠しながらもガン見する。いかんせん暗いのではっきり見えたわけじゃないけど、今キスしなかった??オレの見間違い??

    「もう帰れる?」
    聞き取れるようになった会話は続いている。
    「あぁ、今日はもう帰るしかないだろ」
    苦笑しながら答える優しい声の整備長。
    「日本はまだ冷えるな〜」
    と言って、踵を返し階段に向かう整備長を追って、その男が整備長の癖のポケットに入れた腕に自分の腕を絡めて引っ付く。
    「近いぞ」
    と言いながらも、別に引き離すでもなく、一緒に歩みを進める。

    「………え……イチャイチャする整備長…」
    2人が去ったあとも、なんだか衝撃的な場面を見てしまったショックで、その場から動けなかった。

     あの「シン」と呼ばれた男、どこかで…

    「新多シンです。フリーのライターもやってるんだけど、超進化研究所の調査に必要なものがあれば、世界中から探し当てて届けています。」

     次の日「シン」の謎はすぐに解けた。かつてシンカリオンがZだった頃、アラバキという脅威を整備士長と仲間とともに排除したE 5の運転士、新多シンだ。過去の資料には、名前と簡単な略歴のみが載っていた。2人の絆のレベルが高いのはしかたない。ニコッと微笑む新多さんは、太陽のように強い光を持っている好青年で、なんだかそばにいるだけで安心感がある。そして、2人並んでるとオーラが半端ないのだ。

     整備長は今日は研究所スタイルの薄いピンクのパーカーに白衣姿だ。やたらピンクが似合っている。
    「今回の旅はこのサンプル採取が本当に大変だったんだよ…。」
     新多シンは、世界各地にあるという、謎のエネルギー粒子があるという噂があれば、そこへ行ってサンプルを取ってくるのだという。

     その青い瞳には熱と強い意志がある。
    「今回の1番の収穫はヴォイニッチ手稿の写しを見たんだ。生で!!手が震えたよ…!!」
    ………??ん??なんて?
    「ごめん。こいつ世界の謎が好きすぎるオタクなんだ。」
    はてな顔の僕にフォローを入れる。
    「昨日もずーーっとこの話だよ」

    きのうもずーーっと…?とはあのあとということ?ドキドキしながら2人の様子を伺う。
     2人でいられるのがうれしくてしょうがない、というのがヒシヒシと伝わってくる。軽口を言い合いながら、視線を合わせて微笑みあっている。


     オレは気がついている。今日は整備長が指輪をしていない。でも新多さんが同じ指輪を左手の薬指にしていることに、だ。そして、整備長はパーカーに隠してはいるが、首からかけているネックレスにそのリングがついていることに。
     2人はなにやら、手に入れたサンプルについて話し込んでいる。
     整備長のあんな笑顔見たことないけど?


    「相変わらずイチャイチャしてますね」
    ふと声をかけられて、誰かと思えば、オペレーターの小山さんだった。
    ゲンドウポーズでいつのまにか席についている。

    「シンくんと連絡がとれなくなったという知らせを受けて、アブトくんが能面のような仕事の鬼になっていましたけど、あなたは、そっちのアブトくんしか見てないんですもんね。こっちのキャッキャしてる方が本来のアブトくんですよ。小学生の時から変わらないです」
    「キャッキャ…」

    「尻に!!それはやばいな!!」
    という整備長の謎の発言の後に、新多さんの背中を叩きながらくつくつと笑う声が聞こえる。
    「一緒に住んでるのに、シンくんもあんな感じで飛び回っているし、アブトくんも作業によっては帰れなかったりしますからね。たまに一緒にいる時くらいはね…なにより2人がイチャイチャしているということは平和だということです。私たちは彼らのイチャイチャを守らなくてはいけないんですよ…」
    フッと小山さんは笑い、作業に戻っていった。
     まぁ昨日のしょんぼりしていた整備長より、
    こっちの方がずっと良いか…。とはいえ、少しだけ、ほんの少しだけ整備長の隣にしっくりと収まって、整備長を笑顔にできる新多さんが羨ましいな、と思ったことは秘密だ。
     僕も2人に挨拶をすると、自分の作業に戻る。
    よし、世界平和のために僕も頑張ろうか。僕は機体の元へ向かうのだった。






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