無常の夢路 一
湯気の立たない紅茶。初めに目に映ったのがそれだ。顔を上げてみると、向かいには理解くんが座っていて僕を凝視していた。僕の身体に穴でもぶち抜くんじゃないかというぐらい、鋭い熱視線だった。
僕は最初、理解くんにとって何か悪いことをして問い詰められている最中かと思った。ではこの冷めた紅茶は何だろう。全く以て淹れた覚えがない。カフェかどっかと思って辺りを見渡しても、今いる空間はハウスの内装にそっくりだった。ただ、この違和感はなんだろう。全体的にグニャグニャしているという感じ。向かいに居る理解くんだけが確かな形を得ていた。
おまけに時間の前後感覚が全く掴めない。僕らはいつからこうしているんだろう。五分も経ってない? 実は一日中ずっとこの場面が続いてたりして。
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