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    おるぴ

    ちょっと見せたいけど、あんまり見せたくなくて、でもやっぱり見せたいな〜〜〜!!

    ってものをポイっとするだけ

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    おるぴ

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    discord企画の話3

    あきないはなしハイランド領南西の山・夜

    「今日はいい感じに売れたねぇ」

    初めてハイランド領へ行商に来たアルファルは、山の中腹で腰を下ろす。
    バッグいっぱいに詰めてきたお守りやら水薬は、すべて誰かの手に渡ってしまった。

    「……どこが売れたんですか、ほとんど“譲って”いたでしょうが!」

    のほほんとする主人に、従者のエッダは地面をたしたしと叩きながら指摘した。

    「だって、人形のお守りとか『かわいい』って言ってくれたし、水薬は『ジュースみたい』って褒めてくれたよ。もう譲るしかないよね?」
    「行商とは…」

    頭を抱えるエッダを横目に、それでもアルファルは満足そうに笑う。

    「それにお礼として知らない植物とか種を貰っちゃったから、早くオリヴィエ義兄さんに見せたいね」
    「さいですか…」

    対価として渡された薬草(になるか怪しい)が詰まった麻袋をニコニコと抱える主人を見て、これ以上は何を言っても無駄かとエッダは肩を落とした。



    「……あ、エッダ聞こえる?」
    「何がですか」

    ふとアルファルの鋭い耳が拾ったのは、遠くから聞こえる耳馴染みのない唄。
    神話のような詩のような、複雑なのに心地がいいリズムと言葉達が、風と共に流れてくる。
    一体どこから流れてくるんだろう?

    「……ご主人。もう夜だから下手に動かないでくださいよ」

    立ち上がろうとして止められたアルファルが振り返ると、じっとりとしたエッダの視線が「今日はもう疲れたので面倒見きれないぞ」と物語っていた。

    「ちょっとだけなら、ねっ?」
    「あなたに何かあったら、ハイタワー様に申し開きするのボクですからね」
    「うっ」
    「あと従者失格のボクは新しい主人も探しましょう。わー、かなしいなぁー」
    「うぅ、分かったよ…」

    エッダは途中から棒読みだったが、アルファルの心にはぐさぐさと刺さり、しおらしく座り直す。
    そして「もう休め」と睨んでくる従者に従うように、コートを敷きバッグを枕にして横になった。
    エッダもケープを敷いて、身体を丸くする。

    「おやすみエッダ、また明日」
    「はいはい、また明日」

    月明かりの下、遠くの歌声を子守唄にして二人は眠った。



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