あきないはなしハイランド領南西の山・夜
「今日はいい感じに売れたねぇ」
初めてハイランド領へ行商に来たアルファルは、山の中腹で腰を下ろす。
バッグいっぱいに詰めてきたお守りやら水薬は、すべて誰かの手に渡ってしまった。
「……どこが売れたんですか、ほとんど“譲って”いたでしょうが!」
のほほんとする主人に、従者のエッダは地面をたしたしと叩きながら指摘した。
「だって、人形のお守りとか『かわいい』って言ってくれたし、水薬は『ジュースみたい』って褒めてくれたよ。もう譲るしかないよね?」
「行商とは…」
頭を抱えるエッダを横目に、それでもアルファルは満足そうに笑う。
「それにお礼として知らない植物とか種を貰っちゃったから、早くオリヴィエ義兄さんに見せたいね」
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