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    ikko@中華

    mdzsに滾りすぎてうん年振りに文字書き出戻りした@ikko_cnの小説置き場
    忘羨 曦澄 追凌 宋暁

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    ikko@中華

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    大人になったぞわーい!な追凌
    大人の雰囲気にしたかったけどできなかった

    #mdzs
    #追凌
    chasingLing

    大人と朝と夜 もう子どもじゃないと、思っていた。

     宗主になってから5年が経ち、二十歳になった。最初は叔父上におんぶに抱っこで頼りっぱなしだったけど、今は叔父上が金氏の世情に口を出すことはなくなった。甥として守る対象としてではなく、同等の立場である『金宗主』として接してくれる。背だって伸びたし、酒も飲めるようになった。昔みたいに、お嬢様だなんて揶揄われることもない。だから俺よりもちょっとだけ先に大人になってた思追を金麟台に誘って、月見酒でもどうかと部屋に招いた。月の明かりだけで十分に部屋が照らされるとても綺麗な時期だから、一緒に眺めたいのだと。酒の誘いをかけるなんて、如何にも大人っぽいじゃないか。
     でも本当は、まだ大人になっていなかった。窓明かりを背景に俺の手を取る思追を見て、自分の考えを改める。
     最初はいつもみたいに近状報告も兼ねて話をして、ちょっと行儀が悪いけど2人で寝台に腰掛けて酒を傾けた。飲みなれていない思追はほんの一杯で顔がほんのり赤くなり、その横顔を柔らかく月が照らす。それがとても綺麗で、金凌は私と違ってお酒に強いんだね、なんてはにかむ様子が可愛くて、思わず見惚れてしまった。

    「思追は朝の澄んだ空気が似合うと思っていたけど、こんな月明かりが綺麗な夜も似合うんだな」

     月光が瞳に反射する様を見つめながら、そんなことを言う。特別深く考えずに口をついた言葉だった。けれど思追は一瞬だけ驚いたように表情を固まらせた。そして何も言わず俺の手から盃を取り、近くの卓へ自分の分も一緒に置いて、またすぐ寝台に戻ってくる。そうして俺の両手を取ってお互いの身体を真正面に向かい合わせた。

    「金凌は、私のことを朝が似合う男だと思っていたの?」
    「え、うん……」

     自分が何気なく言ったことを、まさかそんな真剣な顔で聞かれるとは思わなくて、少し戸惑いながら頷き返す。

    「……だめだった?」
    「ううん、そういうわけではないんだ。ただ……意外だったから」
    「意外?」

     思追に朝が似合うという言葉に、なんの意外性もないだろうに。きっと、思追のことを知る人に聞いても納得してくれると思う。いつも穏やかで人当たりがいいし、朝が早い藍氏の中でも特に彼はきっちりと校服を身につけ、雲深不知処の清い空気を纏っているように感じていた。
     それなのに、意外というのはどういうことだろう。
     そんな疑問が顔に出ていたのか、思追はふっと笑って人差し指の側面で俺の目の下辺りを軽く撫でる。その表情が慈愛に満ちていて思わず目線をさ迷わせた。たまに出る思追の、好きが溢れている表情は、心臓に悪い。

    「本当のところは、夜の方が似合う男かもしれないよ」

     頬の近くにあった指先が、そのままするすると移動して耳に触れる。耳輪を擽り、親指と人差し指でふにふにと耳垂の弾力を楽しんでいる。
     酒で体温が上がった思追の指先が熱い。耳を弄られると、擦られる音が大きく反響してこんなにも擽ったいなんて知らなかった。ただ耳を触られているだけなのに、まるで思追の熱が移ったように身体の奥が熱い。耳の穴の近くを指先が掠めて、思わずぁっ、と情けない声が出た。自分の声が凄く甘さを含んでいることに驚いて、両手で口を塞いで顔を背ける。
     夜の方が似合う。それは、つまり。

    「す、思追……あ、」
    「金凌」

     口を塞いで俯いたままもごもごとしていると、そっと手を外されてそのまま握られる。思追の様子が普段と全然違うから顔を見られないなんて思っていたけど、名前を呼ばれて反射的に顔を上げてしまった。
     思追はいつも優しい顔をしてて、分かりやすく愛してくれる。好きだよ、なんてふにゃふにゃの笑顔で言葉にもしてくれる。そんな思追からの好意が心地よかった。
     でも今思えば、それは子ども扱いだったのかもしれない。まだ子どもだった俺に合わせてくれていただけだったのかも。
     そう思い知らされるくらい、今の思追はいつもと全然違った。月に照らされる顔立ちは、夜の匂いを纏った大人の、男の、顔をしていた。

    「ねぇ、金凌。私を君だけの男にしてほしい」

     指先に口付けられて、息を飲んだ。

    「君を可愛がるのも、甘やかすのも、叱るのも、抱き締めるのも、こうやって……愛するのも、全部私だけにして」

     こうやってと言いながら、口付けた指先をそのままちゅっと舐められ、甘く歯を立てられる。決して強くはない力加減なのに、そこからじんとした痺れが全身に伝わる。驚き過ぎて、手を引っ込めたいのに、なにか術に掛かったみたいに動けなくなった。

    「な、んで、突然……」
    「前から思っていたんだ。金凌は1度懐に入れた人には意外と人懐っこくなるし、箱入りにしては誰かに触れられることも触れることも躊躇しないし」
    「箱入りは余計だ」
    「ふふっ、ごめんね? でもそういう金凌が私は好きだし、最初はなんとも思っていなかったんだけど、やっぱり……嫉妬してしまって」
    「嫉妬」

     しっと。思追が嫉妬?

    「お前……嫉妬なんてしてたのか?」
    「実はね。でも自由奔放な金凌が可愛いし、あんまりあれこれ口出すと拗ねちゃいそうだったし」
    「子ども扱いじゃないか!」
    「うん、子ども扱いしてた。……でも、もう金凌も子どもじゃない」

     二十歳になったもんね? と思追が笑う。

    「金凌が大人になって、初めてお酒を一緒に飲む時に言おうと思ってた。今まで取り繕っていた自分は捨てて、自分の気持ちを素直に君に伝えようと。
     君は私のことを朝が似合うと言ってくれたけど、本当はね、とてもじゃないけど朝にはできないようなことを君にしたいと思ってたんだよ」
    「それは……ぐ、具体的に言うと……?」

     好奇心が勝った。多分聞いたら大変なことになりそうだと本能的にわかっていたけど、初めて聞く思追の本音をもっと聞きたかった。
     もっと曝け出してほしかった。

    「……知りたい?」

     思追の声音が変わった。朝霧を晴らすような爽やかさはなく、夜露に濡れたようなしっとりとした低音。

    「私を君だけの男にしてくれたら、全然教えてあげる」

     細めた目元が随分と艶やかだった。今まで知らなかった、隠されてきた大人の思追。自分も大人になった気分だったけど、それはただ年齢を重ねただけで、ちっとも大人になっていなかったと思い知らされる。

    「ねぇ、金凌」
     ――うん、と、頷いて。私を君のものにして。

     でも、大人の顔をしているくせに、大人になりきれていない俺に懇願するなんて。ちょっと、気分がいい。

    「うーん、どうしようかな」
    「えっ!」
    「嘘だよ」

     意地悪したら、夜の雰囲気がちょっとだけほどける。今日は思追の変化に驚かされてばかりだし、意趣返しができて少し満足した。

    「朝の藍思追も夜の藍思追も、全部俺が独り占めな?」
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    DONE【含光君の恋文】#4
    雲夢料理を白黒二人+江澄がもぐもぐします(単体でもお読みいただけます)。

    🎊「MDZSごはんを食べる企画展示Webオンリー」イベント開催おめでとうございます🎊

    【注意とごあいさつ】
    ・まだ知己ですが、そのうちR-18に突入
    ・アニメ/原作/cql履修済
    ・設定捏造してます、ふわっとお読みください
    江家の晩餐(含光君の恋文・番外編)江家の晩餐

     雲夢・蓮花塢の大広間にて。
     こじんまりと、静かな宴が行われていた。

     雲夢は国の中央に属する。辛・酸・甘、麻辣、清淡など、各地の味覚や製法を取り入れた独特の食文化が自慢だ。新鮮な山河の素材に薬膳効果のある山菜を加え、最大限のもてなしに厨房は大わらわ、春節のような賑わいだった。

     だがしかし。

    「……」
    「……」
    「……」

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     江宗主・江晩吟。
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