ぬくもり…誰もいなくなった部室…
Tシャツは汗で濡れているにも関わらず着替えるのが億劫だ。
ベンチに座りただボーと天井を見上げる。
三年生が引退して自分自身がまとめる立場になってからうまくいかないことだらけだ。
今まで生意気やっていたがいなくなった今ダンナや木暮先輩のありがたさをひしひしと感じる。最後まで残っていた目の上のたんこぶだと思っていた三井さんももういない。
はぁ…ため息が漏れる。
ヤスは自分をフォローしてくれるホントにいい奴だ。
流川や花道も先輩たちが抜けた穴を埋めようと頑張っている。
でもオレは…
こんな時想い出すの亡き兄のソーちゃんの顔だ。
ソーちゃんならどうする…
膝を抱え自分で自分の身体を抱きしめる。
あぁ…今でもソーちゃんのぬくもりが鮮明に残っている。
抱きしめて欲しい…リョータは泣き虫だな…って甘えさせて欲しい…
ソーちゃんに会いたい…
高校生になってもオレはまだこんなに弱虫だ。
いくらみんなの前で平気なふりをしても内心ビクビクなんだ…
会いたい…
「おい…」
「っえ…」
顔上げるとソーちゃん…
三井さん…何で…
「帰り際にヤスとすれ違がったらまだお前ここにいるっていうから…」
少し気まずそうに目線をそらし頭を搔く三井さん…
「そうですか…今帰ろと思ってたいところなんで…」
「着替えもまだなのにか?」
痛い所をつかれるがオレはごまかすように立ち上がりロッカーを開け、無造作にTシャツを脱ぎ捨てる。
後ろから三井さんの視線を感じる。
「まだ…何か?」
「そ~のなんだ…あんまり肩肘張るなよ…」
「何が言いたいですか…」
ついこの人相手だとムキになってしまう。
「たまには…回りを頼れよ…最近お前…笑ってないだろ…」
「そうですか…」
オレは着替え終えカバンを持ち三井さんの横を通り過ぎようとした瞬間…
腕を捕まれる
一瞬何が起きたのかわからなかった。
気づけば、三井さんの腕の中にいた。
「何するですか!?」
オレは三井さんの腕の中で暴れるが三井さんの腕の力は強くなる。
「たまには、甘えろ…」
一瞬そう一瞬だけソーちゃんに抱きしめられているようだった。