リュカの花 馴染みの客はいつも大体、恰幅がよく人相も悪い『いかにも』な連中だ。
ここはそういう連中しか来ない。なんたって、人間やら亜人やらを売買する店なのだから。
腐敗都市リュカの、スラムじみた荒れた路地に立ち並ぶ店の数々。多くは盗品などの取引をする店で、俺がいるこの店も奴隷売買という碌でもない商売をしている。
店の中は案外整っていて、人糞やゴミが散乱する表の通りと比べると雲泥の差だ。窓からの視界を遮るために張られた、分厚いカーテンには成金趣味な金色の房飾りがついている。入口から敷かれた真っ赤な絨毯も手入れをされて、ふかふかと歩くたびに音を立てそうなほどだ。
高い天井には水晶ガラスでできたシャンデリアがぶら下がっており、カスのような店に似つかわしくない上品な明かりをキラキラと反射している。
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