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    kkringo0413

    ついったのおえかき差分とメモ溜めと進捗

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    kkringo0413

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    御真祖様と、一輪のばらと、やさしいお寝坊さんの話。

    どうしてクラさんの棺桶が運よくシンヨコにやってきたのか、鬼ごっこ回の商品の中に、表面が凍ったような黒い箱が描いてあったことから膨らませた、あまりにも支離滅裂な話です。
    御真祖様から見たノスとクラ。どっちがどっちかはわからない……。

    オール捏造。キャラも崩壊気味。200%妄想。なんでも許せる方向け。

    「ばらの花に星の夢を」

     無邪気にふるまった一本のばらとの別れに、その小さな男の子は思いました。
     『花はじぶんの泣き顔を見られたくなかったんだ。花って弱みを見せたくないものだから』

     美しいばらたちが水で飾ったドレスを着て、月の光を受けて星のように輝く夜。きらきらと瞬く星の庭、静寂の中に聞こえてきのはシャラシャラと水をこぼすジョウロの音。
     そこではきつねなんかよりもずっとおおきな、小麦色ではなく漆黒を纏う竜が、ばらに囲まれながら鼻歌を歌っていた。「おお、愛しうる限り愛せ……」庭に咲いたばらはどれもたいそう見事なもので、誇りを持っているかのよう。
     綺麗なばらにも棘がある。うかつに手を伸ばせば鋭い棘が刺さるが、それでも彼は気になどしない。触れて傷つくことを知りながらも、触れるのをやめることはない。それが愛するということだと、黒き竜は知っている。
     窓辺の蓄音機から聞こえてくる歌声は、いつ聞いても色褪せることのない響き。初演を見た時の高まりをそのままに、閉じ込める昼の子の術は本当に素晴らしい。
     けれど、今日はなんだかソワソワする。聴きながら、ぼんやりと考える。パタパタと服の土を払い、庭をぐるりと二周歩いて回ればようやく思い出す。
     そういえば、あの教会はどうなったっけ。
     ソワソワしたままではたまらないのが、彼の性分。
     その手にかかれば世界一周などお手の物。風が吹いたかと思うと夜に生きるものへ転じ、瞬きの間にその場から飛び去った。

     わたしは真相を確かめるために、南米へと飛んだ。ブイ。

     ――そんなテロップだって、彼の世界では流れるのだ。

     ***

     竜の真祖が、彼の息子から「親友が心配だ」と聞かされたのは、二百年ほど前のこと。
     その百年後に彼がこの教会を見つけたのは、本当に単なる偶然だった。彼はただ、近くのパン屋に行こうとしただけで、その時の真祖の頭の中には、次はどこへ珍獣ハントをしに行こうかなという企画と、パン屋の香りだけがあった。それがどういう巡り合わせか、この場所へとたどり着いてしまった。
     清々しいほどに美しい星空は一世紀が経過しても相変わらずで、失われてはいないだろうかと思いながら歩を進めてゆくと、腐食して折れてしまった燭台の前に目的のものを見つけ、あった!と宝物を見つけた子供のように嬉しくなった。
     星の光の下、静かに佇むその不思議な棺は少しも雫を落とすことなく凍てついており、同時に、それを覆う美しいほどの氷が、いったい誰の業であるかも悟った。
     祈るものがいなくなってなお、厳かで静かな空気を放っていたその場所も、いまではかつての面影を留めていない。この数十年で屋根が崩れ落ち、苔むしてしまった教会は、見るも無惨な姿へと変わり果てていた。
     躊躇いなく踏み込む竜の真相の足の裏を、教会が焼くことはない。ここにもうその力はなかったし、彼もまた、少しだけ「こういうこと」に覚えのある存在だったからだ。
     外がここまで朽ちてなお、変わることのない黒い色は、夜の闇にあってもよく見える。近づくと、物言わぬ棺は百年ほど前と変わらず強い冷気で、こちらを襲ってきた。
     もちろんそんなことは少しも気にしていないし、氷を砕き、蓋を引き剥がし、すやすやと寝ている子を起こすような無粋な真似もするつもりはない。
    「お寝坊さん」
     コンと表面を叩く。返事はない。それは深い深い微睡みの中で、春が来るのを待っているのだ。こんなになるまで放ったらかしにしておいて、そのくせ、棺を覆う氷は厚くしっかりとしている。まるで何かから守るかのようだ。それとも、自分の気持ちごと閉じ込めてしまったか。
     静寂だけが支配しているようで、何もかもが凍てつき、時間すら止まったかのような場所の中でも、真祖の耳は恐ろしくゆっくりとした鼓動の音を捉えていた。
     
     ノースディンが人間を嫌っていたのはよく知っている。それも無理のない事だ。深く負ったきずは、簡単には癒えないもの。
     孫からそのやさしい悪魔祓いのことを聞いたのは、つい五十年ほど前のこと。
     氷を撫でるときらきらと雪の花が舞った。
     棺の中に納められた男は、極めて純粋な眠りの中にいた。それも、寝息すら立てないほどの熟睡っぷりで。一見したならば誰でも、もう生きてはいまいと判断してしまうだろう。――あれの氷は一見硬く見えるが、燐葉石のように、少し力を入れただけでも砕けてしまう危うさがある。
     これは極めて特異な例であり、誰にも想像などつかなかったのだ。仕方のないことだ。
     忘れているふりをしながら、僅かな可能性を捨てきれずにいたのが、百年の間一度も溶けなかった氷によくあらわれている。立ち直って久しいようではあるが、あの子は、何百年も経ったいまでも、おそらく自分の身を焼いているのだ。
     うーん、とあたまを捻る。どうしたものかな。
     小耳に挟んだ話によれば、そろそろこの教会は取り壊されるらしい。無理もない、こんなにボロボロでは。近づいてくる足音が、見積もりにきた業者のものだと彼にはすぐわかった。
     
     ――そこからの展開は、本当に早かった。
     瞬く間に当たり障りのない近隣の住民Dに姿を変えた彼は、ひとまずわざとらしくならないように務めて、まず謎の棺を外の安全な場所へと運ばせた。その後、数日間様子を見てから、夜に紛れてそれをサラッと強奪。さながら怪盗紳士のようでしょ、ヤッホーと竜の真祖は軽々と棺を担ぎ、ホクホクとどこかの港へと飛び去った。
     そうして数日agoしてどこかの港についた彼は、今度は日本へ行きそうな船を探し、なおかつあまり物事をよく確認しなさそうな人間と荷物管理の担当をすり替え、しれっと積み荷と一緒に運び出した棺を並べる。行き先の書いたラベルをペシッと謎の力で厚い氷に貼ってから、内容に関する記載の必要を思い出したが、何も書かなかった。その方がおもしろい、なんてことは思っていない……たぶん。
     うまくいかなければ少しだけ暗示をかけようとも彼は思っていたが、案の定大した確認も行われることなく、予定通りきちんと船に積み込まれた棺は、長いようで短い旅路へと出ていった。
     赫色の瞳は、果てしない地平へと旅立っていく船の姿を写す。
     ボンヴィアッジョ、まだ見ぬ子よ。船旅はたのしい。彼は初めてホットベイを訪れた時のことをおもいだしている。
     良い旅を。そして良い夢を。そして――すまない、と独り言ちて、少しだけ寂しい気分になる。
     それでも眩しいものを見るかのように目を細め、竜の真祖はその姿が水平線に消えるまで、そこに佇んでいた。
     それが、ひと月ほど前の話。

    ***
     
     ということがあったんだ、エブリワン。見えない壁にむかって彼は話しかける。
     あれだけ人間を嫌っていたあの子が、唯一その生を望んだ人間――わたしは会ってみたかった。
     だからわたしは、あの黒い棺を残して帰るわけにはいかなかった。あの氷を――それだけの出会いを果たしたのに、このまま手を離させてしまうのはいけないと。ノースディンは、表面を偽ることに長けていた。良くないこととは思わない。しかしそのぶん、内にひとりで抱え込んでしまうふしがある。鋭い棘まで、あえて一緒に抱き込んでしまって、それをおくびにも出さずに過ごすのが、あまりにもうますぎる。息子に心配をさせない程度には成功していたようだが……。
     ばらは無邪気でときどき見栄っ張りで、そのくせ寂しがり屋で。自分は棘があるので大丈夫だと、ただそう言い聞かせたい。どれほど鋭い棘を振り上げても、どんなに強がってみても、ばらの花には水がいる。
     わたしのかわいいばらの子。それではあまりにも悲しすぎるから、彼には「生きて、どうかあの子と話をしてほしい」のだ。身を焦がすほどのその感情の答えを、あの子は目をそらさずに知らなければ。差し伸べられる手を掴まなければ。
     触れれば傷つくこともあるかもしれない。触れられて傷つくかもしれない。だけど、その時間こそが大事なのだと知って欲しい。
     
     正直に言うならば、ノースディンのことは羨ましいとすら思う。わたしにはそれが叶わなかった。どこかにあった願い。しかし、それが人間だからと、友は笑った。もし、わたしも同じことができていたなら、いまわたしは何をしていただろう? もちろん言うまでもなく、わたしは毎日が本当に楽しかった。過去を悔やむことはない。たとえ、さよならを言う日が来ると知っていたとしても。
     竜の真祖は、星の色に染めた自分の髪をくしゃくしゃと弄んだ。
     次に彼が目を覚ます時、きっと想像もつかない、ひどく恐ろしく奇妙なものが彼を襲う。それを考えると、ひどく申しわけのない気持ちになるけど、同時にどんな顔をするだろうとわくわくもしてしまう。なにを見ることもなく、なにを教えられることもなく昏い夢に囚われ続けるのは、やはり悲しい。どうせなら、もっと面白くなったこの世界を、一緒に楽しんで欲しかった。
     
     うっふふふ!

     思わず笑い声がこぼれる。なぜって、もうそろそろ彼の旅が終わるころだからだ。ちょうどいいかもしれない。そろそろ出かけることにして――ここで真祖にして無敵の御真祖様は、あたらしい(はた迷惑ともいう)企画を胸に、スマホを片手に電話アプリをプッシュ。
     だからこそ、まだ見ぬお寝坊さん。どうかお願いする。あの子と話をしてほしい。可能であれば、いつかあの子が答えを得られるときまで。
     どうか、一緒にこの「いい時代」を楽しんで。
     
     「ヘロー、ドラウス。ついでにいつもの友達もたくさん集めてプリーズ」

    ――百人でやる鬼ごっこってすごく楽しそうだとおもわない?

     かくして賽は投げられた。
     こうして、いま――シンヨコ全土を巻き込んだ地獄のケンケンパ鬼ごっこが幕を開けるのだった。
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    kkringo0413

    DONE御真祖様と、一輪のばらと、やさしいお寝坊さんの話。

    どうしてクラさんの棺桶が運よくシンヨコにやってきたのか、鬼ごっこ回の商品の中に、表面が凍ったような黒い箱が描いてあったことから膨らませた、あまりにも支離滅裂な話です。
    御真祖様から見たノスとクラ。どっちがどっちかはわからない……。

    オール捏造。キャラも崩壊気味。200%妄想。なんでも許せる方向け。
    「ばらの花に星の夢を」

     無邪気にふるまった一本のばらとの別れに、その小さな男の子は思いました。
     『花はじぶんの泣き顔を見られたくなかったんだ。花って弱みを見せたくないものだから』

     美しいばらたちが水で飾ったドレスを着て、月の光を受けて星のように輝く夜。きらきらと瞬く星の庭、静寂の中に聞こえてきのはシャラシャラと水をこぼすジョウロの音。
     そこではきつねなんかよりもずっとおおきな、小麦色ではなく漆黒を纏う竜が、ばらに囲まれながら鼻歌を歌っていた。「おお、愛しうる限り愛せ……」庭に咲いたばらはどれもたいそう見事なもので、誇りを持っているかのよう。
     綺麗なばらにも棘がある。うかつに手を伸ばせば鋭い棘が刺さるが、それでも彼は気になどしない。触れて傷つくことを知りながらも、触れるのをやめることはない。それが愛するということだと、黒き竜は知っている。
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