「こんにちは!キャサリン、なんか依頼ないか〜?」
果てなく続く旅の途中。旅人とパイモンは再びモンドを訪れていた。
長旅で疲れた体を癒すべく、故郷のように感じるこの場へ……
……という建前の元、2人はモラ稼ぎのために依頼を探しているのであった。
「こんにちは!丁度あなたに頼もうと考えていた依頼がありますよ。
どうやら、新たな秘境が発見されたようでここの調査をお願いいたします。
ただ……」
「おっ、もしかして、奥にお宝があるのか?!」
「パイモンしーっ、なにか訳ありって感じかな?」
言葉を言い淀むキャサリンに少し不穏な雰囲気を感じつつ、
旅人は続きを促す。
そういえば、この城下はこんなにも静かだったろうか?
「その秘境は魔物の出入りはもちろんですが、どうやら冒険者では無い一般人も多く出入りしているようなのです。
その中の多くの人は、なにかに取り憑かれたかのように様子がおかしいそうなんです。」
「ひぇ、お、お、おおおばけとかそういう類のやつが出るのか?!」
「確たる証拠は無いのですが、そのような噂も広がっています。
なので冒険者協会に調査の依頼が来たのです。……騎士団から。」
騎士団、西風騎士団。かつて多く世話になった聞き馴染みのある名だ。
モンド城に住む人々を守る責務のある騎士団が、民が関わっているであろう問題を冒険者協会に頼むのは、たしかに少し不思議だった。
「騎士団が?確かにあそこは万年人手不足だけど……何かほかに問題が起きたとかなのかな。
よし、旅人!1回騎士団に行ってみよう。この秘境についても何かわかるかもしれないしな!」
「そうだね、ありがとうキャサリン。この依頼、俺が受けるよ」
「はい!よろしくお願いいたしますね、星と深淵を目指せ!」
冒険者協会窓口を後にして、街中を進む。
流行り少し活気が薄い気がする、そして何より……。
「あ、またあったぞ。なんなんだろうなぁこのチラシ。
『入教者募集中!』って、風神を祀ってるこの国で新しい宗教を開こうなんて、凄いことだよな。」
「そうだね……それに、なんかちょっと嫌な雰囲気するんだよなぁ」
モンドに入国してから度々見かけるチラシ。
宗教勧誘のものらしいがパイモンの言う通り、不可解な点が多すぎる。
たしかに『自由』を愛する国ではあるが、神はちゃんといる。
それなのに新たな宗教が発足するのはどう言ったことなのだろうか。
「うーん、オイラたちが離れてる間に色々あったっぽいなぁ……。
やっぱり騎士団に向かうのは正解かもな、何があったのかまとめて聞きに行こう!」
淋しい空気と不可解なチラシをあとに、ふたりは騎士団本部へと足を進めた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
久々に訪れた騎士団はいつも以上にばたばたと忙しそうな様子だった。
所狭しと人が駆け、資料が置かれ、まさに人手不足を体現したかのようなくらい大慌てだった。
「うおぉ……凄いな、どうしたんだこれ。」
「ね、いつも忙しそうではあったけど、ここまでじゃ無かったもんね……。」
「うーん、あ、アンバーだ!話を聞きに行こう!」
ぴょこぴょこと赤いリボンを揺らしながら駆けずり回ってる少女に声をかける。
彼女は驚いた顔をしつつも、嬉しそうに声をあげた。
「旅人、パイモン!モンドに戻ってきてたんだね!」
「あぁ、ちょっと依頼を受けてな……。
それより、騎士団はどうしてこんなに忙しそうにしてるんだ?
もしかして、なにか大きな事件とかあったのか?!」
「あー……事件、と言えば事件なのかな、ここのところ色々一気に押し寄せてきて……それなのにあの人は帰ってこないし……
うん、ジンさんともお話をした方がいいと思うから、団長室に行こっか!」
アンバーに連れられ団長室へ。
部屋の中もいつも以上に資料の山が積み上がっていた。やはり何かがおかしい。
いつもこんなに仕事が溜まっていたのだろうか?……否、それはない。
だって仕事が山積みになる前に、ジン団長が頭を抱える前に
いつも彼が大量の仕事を捌いていたはずだ。
「栄誉騎士!久しぶりだな。
すまない、こんな状態ではろくにお茶も出せないが……君が帰ってきてくれて本当に良かった……。」
「ジン団長、何があったんだ?アンバーから事件?があったって聞いたけど……。」
「あぁ、本当に申し訳ないが、栄誉騎士。君の力を貸してもらいたい」
ジンは話し始めた。
ここ最近、モンド内で行方不明者が多く出ていること
アビス教団の動きも活発となっていること
……その全てが、とある新興宗教と繋がっていると考えたガイアが調査に出たきり帰らないことを。
「ガイアが?!そうか、だからこんなに騎士団は忙しそうなんだな。」
「あぁ……本当彼には頭が上がらないな。
栄誉騎士、ガイアの捜索とこの新興宗教についての調査を頼んでもよいだろうか?
ガイアの残した資料によれば、その新興宗教はとある秘境を根城にしているようだ。」
地図上に指し示されたのは、先程冒険者協会でも見た場所
例の新しくできたといわれる秘境だった。