× × × の記憶生まれは、普通です。
特段面白みもない。普通の家庭に生まれた普通の子。
大好きな幼馴染がいました。
想像力豊かな幼馴染。
彼はいつも、俺を楽しませてくれました。
でも、俺は、意地っ張りだったから、素直に言えなかったんだ。
幼馴染は、物語を紡ぐことが好きでした。
俺も、彼の世界を見ることが好きでした。
彼は小学校に上がっても、色んな世界を描き出して、俺にみせてくれました。
でも、相変わらず俺は素直になれなくて
「おもしろくない」なんて言ってしまいました。
本当は大好きなのに。
高校生になりました。
中学時代、色々あって大っぴらに書けなくなった彼はこっそりと物語を紡いでは、俺にみせてくれました。
「おもしろくない」「つまんない」そう言い続けてもう10年くらい経ちます。
それなのに、彼は俺にだけ見せてくれました。
明日こそ、明日こそ、ちゃんと伝えよう。
10年間溜めてきた思いを、彼に伝えよう。
そう思っていました。
それなのに、世界は残酷でした。
俺は、彼の目の前で、殺されてしまったのです。
今でも、イカれた男の気持ち悪い笑い声と、
恐怖に染る彼の顔は忘れられません。
俺は、最期まで彼を思い続けていました。
それなのに、
俺は、最期まで素直になれませんでした。
死にたくない、そう思いました。
伝えたい、そう願いました。
そうしたら、神様が最後にチャンスをくれました。
目を開けると、少し成長した彼の姿がありました。
彼は「俺の物語を読んでよ」と言いました。
でも俺には目がありませんでした。
そうしたら、彼が読み聞かせてくれました。
それは、一番最初に描いた世界。
俺の大好きな世界。
「どうかな?」
彼か問いました。
でも俺には口がありませんでした。
伝えるんだ、伝えなきゃ、そう願いました。
そうしたら、言葉が出てきました。
「つまらない」
やっぱり、素直にはなれませんでした。
俺は、彼に生きてほしいと思いました。
生きて、生きて、もっと色んな世界を描き出して欲しい。
そのためなら、俺はなんでもしよう。
そう思いました。
それなのに、世界は残酷でした。
外の世界は、彼を拒みました。
なんで?なんでなの?おれにはわかりませんでした。
彼が煩わしそうだったから、耳を閉じました。
彼が苦しそうだったから、目を閉じました。
「帰ろう」
そう言って彼は俺の手を引いて、家へ帰りました。
俺が、彼の世界になろうと思いました。
全部全部全部、彼のためでした。
大好きな、彼のために
彼の描く世界を、彼を守るために、おれはこれをえらんだんた。
この身を堕とすことによって、彼が守られるのなら……。
俺は喜んで差し出そう。
ねぇ、また、きみのせかいをみせてよ。
そしたら、こんどはちゃんとつたえるから、