Day.8【買い物】 熱い吐息と精を吐き出す。厭らしい水音を立てながら、左馬刻は自身をゆっくりと引き抜き、覆っていたゴムを外した。白濁の溜まったそれを縛って、ゴミ箱へ投げ入れる。ヘッドボードに置かれた箱の中から新しいゴムを取り出そうとして、左馬刻は顔を顰めた。
「チッ、クソが……」
「ハァ……ッ、どうした?」
「……ゴム、切れちまった」
箱をひっくり返して揺らす。中身の入っていない箱からは、当然何も落ちてくることはなかった。
「……お前がいきなり盛るから、残りを確認する暇もなく手持ちのゴムを使う羽目になったんだろ……」
「仕方ねぇじゃん、銃兎ン家でヤんの久しぶりなんだからよ」
左馬刻が口を尖らせながらベッドから立ち上がる。床に放られていた服を手に取って、着替え始めた。
「悪ィ、コンビニ行ってくるわ」
「……俺も、行く」
銃兎も未だ余韻の残る身体をゆっくりと起き上がらせる。腰を押えながら、クローゼットから簡単な服を取り出して着替えた。
「身体辛ぇだろ、休んでろや」
左馬刻が揶揄の類などではなく、本気で銃兎のことを気遣ってくれているのは分かっている。しかし、銃兎はその左馬刻の気遣いを、きゅっと服の裾を掴むことで制した。
「……俺が、残り確認してなかったのも悪いし、それに……」
銃兎が左馬刻から目を逸らす。普段の溌剌とした声からは想像がつかないほど小さな声で、耳まで赤くしながら呟いた。
「……今、左馬刻と離れる方が辛い、から……」
「……!!」
左馬刻が目を見開く。やがて、ハハッ、と破顔して、銃兎の腰に腕を回してきた。
「ンじゃ一緒に行こーぜ。でも流石にその服はちょっと薄着すぎっから俺様の上着羽織っとけ」
左馬刻の服──上下揃いのジャージのうち、上着だけを銃兎の肩にかける。下は左馬刻が履いたままだ。
「……これ、バカップルみてぇじゃねぇか」
「いいじゃん、俺様と離れたくないんだろ?」
「……バカ」
悪態をつきながらも、銃兎は左馬刻が差し出した手に自らの手を乗せる。ぎゅ、と繋がれたその手は、まだ情事の温かさをほのかに残していた。