天を游ぐ青白い月が輝く朝でも夜でもない不思議な空間の中。
私と彼は、この本丸のいちばん奥の部屋で荒々しく繋がっている。
突然の警報と、出陣。
不利な戦況の中、本丸を守るためみなが戦っている。そんなことは分かっている。でも、もう全てが耐えられなかった。受け入れられなかったのだ。
今、わたしたちはかつてない戦争をしている。
生命の危機を感じると、人間は生殖欲求が高まるというのを聞いたことがある。
では刀は?
彼らは決してセックスで増えるわけではないはずなのに。戦いを抜け出し、私を抱く刀の腕はいつも以上に強引で野生的だった。
むしろ今までこんな風に抱かれたことはなかった。
そんな事を考えていると体を反転させられて、後ろから勢いよく挿入される。
思わず仰け反る顎を掴んで無理な体勢で口付けられた。
いつも私に触れる手は優しいのに、妙に手慣れている気がして。
何故だか、ふといなくなったあの人と、彼がこんな風に睦み合っている姿を想像した。
「大丈夫なのかな、みかづ……ん」
そんな事を考えていたら、つい暗黙の了解で互いに言わなかった話題に触れてしまう。しまった、という表情を顕にする私をひと睨みした後。
他の男の名前を呼ぶな、とばかりに噛み付くようなキスをすると、私を力強く抱き寄せた。
「」
何も言わずに抱きしめる腕が痛くて逃れようともがいてみるが、びくともしない。諦めて動きを止めた時、ようやくその腕が震えていることに気づいた。
「大丈夫、大丈夫だよ」
腕を背に回してポンポンと撫でであげる。
そうして、ようやく。嗚咽のような呻き上げて、私はようやく彼が弱った心を見せてくれたのだ。
ひとしきり、抱きしめあって泣きあった後でわたしたちは布団に仰向けになって窓の隙間から見える月を見ていた。
「私がいなくなっても、そんな風に悲しんでくれる?」
言うと同時にデコピンをされた。
文句を言おうと横を見ると、泣きそうな顔をしているからつられて私も泣きそうになる。
「うそだよ。いなくなったりしないから」
そうして、二人で、泣きながら笑った。