「だいっきらいっ!!」
イギリスでは珍しく天気の良い昼下がりの公園。ミスタは依頼人との待ち合わせの合間に、緑に囲まれた木陰のベンチで遅めの昼食をとっていた。
草原でボールを蹴り駆け回る子どもたちの楽しそうな声が耳に入ってくる。それをBGMにしてハムたっぷりのサンドイッチを頬張っていた時、ふいに少し離れたところから大きな子どもの罵声が聞こえてきた。その声にミスタはビクッと肩を跳ねさせる。そばでおこぼれのパンくずを狙っていた鳥も、大きな音とミスタの動きに驚いて素早く離れていった。
声の正体はおそらく、よくある子ども同士の喧嘩だろう。公園にいるのだから子どもの喧嘩の一つや二つ、聞こえてくるのも仕方のないことだ。そう自分に言い聞かせていやに速く跳ねる心臓を落ち着かせる。冷静になると肌に浮かんだ冷や汗が体温に馴染んでぬるくなっていく感覚に、ミスタは苦虫を噛み潰したような顔をした。
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