【赤三】サヨナラできない「肉まんとカレーまん、どっちにするかな……」
真剣な表情でレジ横のガラスケースを見つめた末、三井がもの凄くどうでもいいことをつぶやいた。
昇降口でばったり会って「なんか久々だな。せっかくだから寄り道して帰ろーぜ」などと誘ってきたのは、ただの気まぐれだろう。オレがそれに乗ったのもまた、ただの気まぐれである。
「奢ってやろうか」
「ハァ? お前が!? なんで」
「決まったんだろう、推薦」
ぱちりと瞬いた後「知ってたのかよ」と視線を外す。
「あ、じゃあオレ肉まんにするからお前、カレーまんにしろよ」
「アホか。そこまでしてやる義理はないわ」
コンビニの外に出て、買ったばかりの紙包みを開けると、冷たい空気にふわりと湯気が立ち上った。
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