季節限定貢ぎ物「ちょっとタバコ買ってくる」
返事はないだろうと思いつつも、一応そう声をかけて玄関へ行く。予想通り、いつもなら聞こえる「いってらっしゃい」という柔らかい声はない。「うー」といううめくようなものはした気もするが、空耳かもしれない。
そこに僅かながら罪悪感を抱きつつ、KKは慣れたスニーカーをはいて、財布だけを持つ。鍵をどうしようかと一瞬だけ考えて、家に残る暁人がいるからいいかとそのまま扉から出た。
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暦上は秋とはいえ昨今まだまだ夏の気配を残す東京は、昼はじりじりとした熱気を感じる。
「いつまで続くんだか……」
ぼやきながら向かうのは、行きつけともいえる近くのコンビニだ。ごくごく平均的な品揃えだがタバコの購入程度ならば十分である。
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