『世界藝術家辞典 W・E・O・A』 藝術世界推進機構 編纂/最新版よりHellmut Ebel
ヘルムート・エーベル。ヘルムト。××××年11月28日生まれ。没30歳(××××)。
彼は、この藝術文化主義が確立されるよりも遥か前に遡る作家である。なにかの制作に秀でて著名という訳でもなく、かと言って、たった一つの作品が特別な評価を受けた訳でもない。
彼の作品“群”が一部から注目を浴びる訳は、生涯、民衆に向けて、パンを様々な描画、制作手段で表現をしたというその一点だ。
彼が制作を始めたのは、彼の手記によって判明している中で凡そ十六歳。最初こそ、彫刻や油彩画が主であったが、陶器、版画、果てには日本画など方法を選ばずにパンというシンプルな題材を表現し続けた。彼は非常に稀なスピードで作品を世に送りだした。まるで、パン屋がパンを毎日焼くように。
作品タイトルは全て『パン』で統一され、例外は無い。もしそこになにか修辞があるとするならば、それは彼の死後、別の人の手によって補足されたものである。
彼は自身の作品について自身から解説を述べることは無く、不明な点も多い。
また、彼の作品は民衆に非常に身近だったことからプロパガンダに多く利用された。その点において、時代時代で彼の評価は左右されていることにも注目したい。
パンを題材とした作品のみを制作する彼は未だ謎の多い藝術家である。ジョン・ドゥとしての顕現が待たれるところだ。