彼は誰時彼は誰時「崩持さん! 良いのかよ、あんな言わせて」
「いいんだよ、いいんだよ、言わせておけば」
署の一角に賑やかな声が響く。方や、不満を露に巡査部長に突っかかる尾羽切福郎。方や、それを軽々に流す崩持無苦。外で崩持が何か言われたらしく、それに言い返さなかったことを尾羽切は詰めているらしい。デスクに座っていた大橋篤胤はホワイトボードを確認した。今日の二人は基本的にパトロールに従事するようだ。
――ずぅっと喋っているんだろうなぁ、あの調子で。
大橋が二人にちらっと視線を戻せば、尾羽切の頭を崩持が乱暴に撫でているところだった。尾羽切がその手を振り払い、崩持さん、と大きめに声を張る。その声は署の喧騒に吸い込まれていった。
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