閃光それはまさしく光だった。
白銀の一閃。
鋭く研ぎ澄まされた雷光が、わたしの目を射抜く。わたしの身体を焼く。わたしの心臓を貫く。
「…………勝負あり、かな」
ふぅ、と息をつき、彼女はわたしの胸元──の手前でぴたりと止められていた切先を地面へと下ろした。
「今日も手合わせしてくれてありがとう。助かるよ」
そう言って彼女がいつものように屈託なく笑う。だからわたしも、とびきり晴れやかな笑顔を、最高の戦友がいてくれてよかったという笑顔を、無意味で滑稽な貼りつけただけの笑顔を、彼女に返す。勇士の証である真紅の兜を外し、艶やかなヴァイオレットの髪をかき上げるその額には汗ひとつすら浮かんでいない。汗だくになったわたしの体は、へたり込んだまま立ち上がれずにいるというのに。
「君とこうして切磋琢磨する時間が好きなんだ。君は勝手を知っているから張り合いがあるし、夢中になれる」
確かな自信と、傲慢とは程遠い思いやり。清らかに澄み切ったアイスブルーの瞳に映るそれらを、ただただ美しく思った。いつだって彼女の双眸はどんな宝石よりも綺麗だ。見ているだけで惚れ惚れとしてしまうし、吐き気がする。
「明日もお願いしたいんだけれど、いいかな?」
当然のごとく、わたしは頷いた。きっと明日も、そのまた明日も、わたしが死に物狂いでかき集めてきたものを、彼女はなにもわからないまま優しく、惨く踏み潰してゆく。けれどもわたしは彼女を拒んだりはしない。どれだけ忌々しく疎ましい存在に成り果ててしまったとしても、一番の特別な「友達」であることに変わりないのだから。
どんなに眩く輝く光も、同じ明度の光の中にいては取るに足らない、ただの凡庸な光だ。光の周りは暗い方がいい。暗ければ暗いほど、光は晴々とした表情でより眩しく輝ける。
「立てるかい? ほら」
どこまでも無垢な善意が酷薄に手を差し伸べる。
「ありがとう」
例えこの身が、本物の刃によって刺し貫かれようと────これまでも、これからも、絶対に離してあげはしない。
そんな情念に溺れながら、へらりと笑って。わたしは自身へ向けられた温かな剣先を、グローブ越しにぎゅうっと強く握り締めた。