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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    POIPOI 434

    85_yako_p

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    ケーキが食べたい漣の話。(2019年頃……?)

    ##THE虎牙道
    ##牙崎漣
    ##カプなし

    優しい人星が見え始めた寒空の下、牙崎漣は苛立っていた。クリスマスという文化に苛立っていた。それは宗教上の理由でも、彼が今たった1人でクリスマスと言う日を歩いているからでもなかった。それは今に始まった話だった。彼はほんの一時間前までは上機嫌だったのだ。
    彼が初めて体験したクリスマス。そこで彼が得た恩恵は計り知れない。色とりどりのケーキ。かぶりつけと言わんばかりの骨付きチキン。バラエティに飛んだピザの群。食べ盛りを満足させる、肉がたっぷりと乗ったサラダ。飲み慣れない、しゅわしゅわとした爽やかな飲み物。そして、事務所の全員で交換しあったプレゼント。重ねて言おう、彼は本当に上機嫌だったのだ。
    小さな子供もいる事務所だ。帰りを待ちわびる家族がいる人も少なくない。事務所でのパーティーは昼前から始まり、夕方には終わった。後片付けなど面倒だと、誰にもバレないように彼は事務所を出た。本当は、数人にはバレてることに気がついていた。ただ、それが優しさなのかは彼にはわからなかった。
    クリスマスは馴染みがない。それでも自分の上機嫌を分け与えるように、覇王に多めに煮干しをやった。しばらく冬毛をもこもこにした覇王と遊び、口うるさいチビと鉢合わせる前に路地裏を後にした。そうして思った。小腹が減った、と。遠慮なしに腹に詰め込んだ食料を裏切るようなことを思った。食べたいモノは決まっていた。

    イチゴの乗ったケーキが食いてぇな。

    ケーキなら食べている。ただ、イチゴのショートケーキは食べていなかった。チョコのケーキを食べて、チーズのケーキを食べて、よくわからないが香りと味の良い真っ赤なケーキを食べた。それを咎められないほど、用意されたピースは多かった。
    さて、それでも収まらない食欲は、宝石のような赤い果実で飾られたケーキを見初めた。しかし、彼は気がついてしまった。手を伸ばした先のケーキに目線を向ける気弱な少年に。
    彼はショートケーキを手に取り、それをそのまま弟子と呼ぶ少年の皿へと乗せた。それが最後のショートケーキだった。遠慮する少年に背を向けて、残ったピザを食べていたらショートケーキへの興味はパタリと失せた。

    のだが、彼は今、何故か無性にイチゴのショートケーキが食べたいのであった。

    彼はデパートへと赴いた。誰かがデパートのケーキはおいしいと言っていたのを覚えていた。期待を胸にデパートの階段を下りた彼は愕然とした。
    人、人、人。見渡す限りの人の群だ。彼はデパートに立ち入ったことがなかったので、これにはたいそう驚いた。なんなら怯んだ。彼は人混みがあまり好きではなかったのだ。
    帰ってもよかった。しかし、彼はすぐにムキになるし、意地になる。誰と勝負をしているわけでもないのに、引き下がるのは癪だった。
    彼は歩いた。普段の自由な足取りを妨げられながら、なお歩いた。人の波に飲まれ、香水の匂いに顔をしかめ、ざわざわと騒がしい店内を歩いた。
    適当に決めた店には列が出来ていた。いや、どの店にも列が出来ていた。最後尾に並び、数時間にも感じられる三分間をすごした。ようやくたどり着いたレジで、彼は信じられないセリフを聞いた。

    「ご予約のお客様ですか?」

    ご予約。聞き返そうとしてやめた。それに自分が該当していないことがわかったからだ。
    静かに首を振る彼に、レジの女性が申し訳なさそうにケーキは買えないと説明をする。彼はケーキを手にすることなく、また人の波へと飛び込んだ。

    ご予約、ご予約。ご予約ってなんだよ。彼は疑問と腹立ちを交互に咀嚼するが、飲み込めずに吐き出すことしかできない。
    デパートを出た頃には馴染みの商店街は活動を止めていた。反対側、駅へ続く道の賑わいに脚を進めれば、そこには白タキシードの老人が微笑むチキン屋さん。チキンでいいか。少し上を向いた気持ちに投げかけられたのは、またもこの言葉。
    「ご予約のお客様でしょうか?」
    なんなんだよ!今日は!

    散々だ。クリスマスってのはワケがわからない。飯が食える日だと思ったら、飯にありつけない日でもある。全く持ってわからない。
    足は自然と男道ラーメンへと向かっていた。ここならラーメンが食べられるという、絶対的な信頼があった。彼は知らないが、きっと彼はケーキが無事に買えても、クリームをぺろりと飲み込みここに来ていただろう。
    「らーめん屋ぁ! 大盛り! チャーシュー特盛り!」
    どかりと腰掛ければ、先に座っていたライバルが態度を窘めてくる。くだらねー。無視をしてしばらくしたら、望みのラーメンが出てきた。そして、
    「……らーめん屋、これ……?」
    ラーメンの横、本来ならザーサイなどが入るべき鉢に無理やり詰められていたのは、イチゴが一つだけ乗った、シンプルで真っ白なケーキだった。
    「…………どーして?」
    ご予約なんて、してないのに。
    「おまえさん、食べたかったんだろ? 直央に譲ってくれたんだってな。タケルが言ってた」
    「円城寺さん! それは言うなって言っただろ!」
    大慌てで声をあげるこの男に見られていたのか。気恥ずかしさよりも驚きが勝った。よりにもよって、この、いつもは「オマエには興味ない」と言わんばかりの、こちらが追いかけてばかりの人間が。
    「……俺は見かけて、それを話しただけだ。ケーキを買ってくれたのは円城寺さんだぞ。円城寺さんに言うことあるだろ」
    「……くはは!オレ様に貢ぎものなんて、わかってるじゃねーか!」
    オマエな、と呆れた声が聞こえる。それをおおらかに笑い飛ばして、道流が笑った。
    「いい子にはクリスマスプレゼントをやらないとな! もちろん、タケルにもだ。人の良いところに気づけるタケルも、優しい子だ」
    そういって差し出されたケーキは、三角のチョコレートでネコの耳が模してある。二人は少しうろたえる。道流は二人を安心させるように、自分のぶんのケーキも取り出した。

    ケーキを食べた漣は思った。
    もし何かの気まぐれでデパートのケーキを買うことがあったら、この二人の分も買ってきてやってもいいかと。
    だって優しいいい子にはプレゼントをあげるらしいから。コイツらには、あげたっていい、と。
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    Replies from the creator

    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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