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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    タケ漣とねこ(2019/04/21)

    ##タケ漣

    ねこのはなし「猫を飼わないか?」
     そう言った。ソファーで溶けてるアイツは少しだけ驚いたようにこっちを見た。きっと、賛成してくれると思っていた。めんどくさそうに、「チビが世話すんなら」って、そう言ってくれると思っていた。
     だって、アイツだって猫が好きだから。好きって言葉をアイツは使わないけど、アイツの目を見ればわかる。目は口ほどに物を言う。猫を見ている時の目は、他の生き物を見ているときとは明確に違う。そして、これは俺が自惚れてしまう原因なのだけど、俺と、円城寺さんや四季さんを見る時の目も、違う。最初は、こんな目をしていなかった。七年かけて、告白をして、体を重ねて。
     俺のことを見るアイツの目は、変わった。
     だから、猫が好きで、俺のことが好きなアイツは、この提案を断らないと思ってた。だけど、返事は一向に返ってこない。
     あまり長くはない、それでも少しだけ不安になってしまうような沈黙。アイツの表情を見ると眉間にシワができていて、なんだか難しい顔をしている。アイツはこういう顔をするようになった。おとなになったんだな、って思う。
     眺めていたら、視線が逸れた。バツが悪そうに、アイツが言った。
    「覇王にメシやってた時みたいに、その辺の猫にメシでもやってろよ」
     俺は、俺たちはチャンプがいなくなってから、猫にエサをやることをやめていた。
    「……野良猫に餌付けするのと、飼うのは違うだろ」
     野良猫の餌付け。それは違うと思っていた。俺はきっと、猫を可愛がりたかったわけじゃなくて、責任を持ちたかったのかも知れない。
     アイツと、一緒に。
     アイツは多分断りたいんだろう。それでも言葉を濁しているのは、きっと俺のせいだ。
     俺が、子供がほしいと言ったからだ。
     俺たちには子供はできない。それでも、親のいない子供を引き取って家族になることはできる。でも、それをアイツは否定した。理由は聞けなかったけど、あの時の会話は思い出したくもない。
     あんな明確な拒絶、ずっと生きてきて初めて味わった。足元がガラガラ崩れていくくらい不安になって、それを見たアイツが、条件付きで手を差し伸べた。俺はすぐさまその手を取った。それ以来、子供の話はしなくなった。
     だから、代わりに、猫。
     正しいか、間違っているか。そう聞かれたら俺は間違っていると答えるんだろう。それでも、猫が飼いたかった。きっと、それを見抜かれていた。
     ただ、アイツは正しいか、間違っているかで物事を決めたりしない。きっと、俺の気持ちと自分の気持ち、それだけを判断材料にして結論を出す。それでも言葉にならないんだ。だからやっぱり、本当に嫌なんだと思う。
    「……チビが猫飼いてぇのはわかる」
     あの時みたいな明確な拒絶はなかった。妥協点を探るように沈黙を保ったあと、観念したようにアイツが呟いた。
    「…………オレ様はな、オレ様がいなきゃ生きてけねーイキモノは嫌いなんだよ」
     そう言って、目を閉じてしまった。会話を終えたいというアイツの合図。こういう時、すぐに引き止めないと、アイツは本当に寝る。
     嫌い。違うだろう。それは、怖いっていうんだ。そう教えてやりたかった。きっと俺の考えは、正しい。
     俺が面倒を見るから。そう言えばよかったんだろうか。でも、俺にはそんなこと、言えなかった。俺は、アイツと一緒に猫を育てたかった。一緒に、命を背負いたかった。
     でも、猫の話よりも気になってしまったことがある。話が逸れるとわかっていても、口にしてしまった。
    「……いなくなる予定でも、あるのか?」
    「あ?」
     不安になった。普段は考えないようにしているけど、アイツがふらりといなくなる想像を、たまにする。夢に見る。うなされて、起きる。普段よりもアイツを求める。アイツはきっと、そうして熱を欲する理由を知らない。
    「……オマエは、オマエがいなくなったら生きていけないイキモノが嫌いなんだろ?」
    「だから、そう言って、」
    「俺はどうなんだ?」
    「…………は?」
    「俺はどうなんだよ」
     最初は戸惑いで、次が悲しみで、今は、なんなんだろう。泣きたい気持ちと、アイツをぶん殴りたい気持ちが、ぐるぐると肺を掻き回す。
    「俺にとってのオマエを、なんだと思ってるんだよ。俺がオマエを失って、大丈夫だとでも思ってるのか?」
     ああ、話題が完全に逸れた。それでも、吐く息すべてが言葉で揺れる。それくらい、俺は悲しいことを言われた気がしたから。
    「……別に、死にゃしねーだろ」
    「なんでそう思うんだよ」
    「なんでって、それは……」
    「答えろよ!」
     大声を出してしまった。なんで、そう思うのか。オマエがいなくなったら生きていけないイキモノ。それは、猫の話だったか、俺の話だったか。見失う。
    「……なぁ、オマエはいなくなる予定でもあるのか?」
    「ねえよ。けど、」
    「なら!」
     いっそ、あの時みたいに拒絶してくれたらよかったんだ。そうしたら、同情のようなオマエの手に縋ることができたのに。
    「なら、ならさ。ずっと一緒にいてくれよ。それでさ、猫を飼って、俺たち二人の子供みたいに可愛がって、三人で暮らそう? なぁ、俺、そんなに変なこと言ってるか?」
     返事はないと思っていた。それでも、それなりに長い沈黙の中で俺は答えを待った。
    「……チビは死なねー。ってか、死ねねーだろ」
    「だから、なんでそう思うかって、」
    「チビは、チビのチビ共を見つけてねーからな」
     自嘲気味な笑い。こんな表情をアイツはするんだな。なんだか、気付かされる。
     立場は一転した。今度は俺が黙る番だった。いやだ、やめろ。こんなの、ズルい。 
     俺がアイツらを見つけたら、コイツはいなくなる気なんだろうか。
     もう、猫の話なんてできなかった。オマエがいなくなったら、なんて話もできなかった。本心を、無責任な言葉に乗せて伝えることしかできなかった。
    「……俺はオマエの前からいなくならない」
    「……どーだか」
    「俺は、オマエがいなくなったら、死ぬほど悲しい」
     手に触れることはできなかった。コイツは一言、死なねーくせに、って笑った。見慣れない、歪んだ笑みで。
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    Replies from the creator

    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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