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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    タケ漣ワンドロ94「花」(2021/03/12)

    ##タケ漣ワンドロ
    ##タケ漣

    桜が散ったら会いましょう 花冷え、という言葉は円城寺さんに教えてもらった。
     桜の花が咲くころに、たまに寒くなることをそう呼ぶらしい。陽の光など忘れたように寒くなる様子や、憎めない裏切りのような寒さをそう呼ぶのだと。
     だとしたら、アイツは花冷えのころにやってくると言える。なんだか、ずいぶんとアイツっぽくない。花冷えという言葉から感じる、たとえば翔真さんのような背筋の伸びた美しさがアイツにはどうも当てはまらない。
     コイツの美しさは違うだろう。そう考えて、俺は初めてアイツの美しさについて考える。
     まず、銀色であることは揺るぎない。ステージの上でしか見られないものだと思うのだが、ふとした拍子に意識を通り過ぎていくような、そういう俺が当たり前に見過ごしている部分にも潜んでいる気もしていてもやもやとする。もやもや、というか、ざわざわ、だろうか──俺がアイツに『美しさがある』と当たり前に思っている。おかしな話だ。まるでゲームのバグみたいだ。
     でも、きっとなにかあるんだろうな。アイドルやってるくらいなんだから。
     まだ布団をブランケットにできていない。昨日は暖かかったけど、今日は『花冷え』の日だ。この布団を目当てにやってくる存在の、美しさについてぼんやりと考えながら風呂に浸かる。お湯は抜かない。この家じゃ追い焚きはできないけど、熱湯を足せばいいだけだからだ。
     この力技を教えてくれたのが円城寺さんなのは少しおもしろかった。『花冷え』を教えてくれた人が『追い焚きができなくても熱湯を足せばいい』と言う。俺は円城寺さんのこういうところがいいなって思う。
     こうやって風呂に入ってる時間とか、コンロから離れられない時間とか、ゲームから目が話せない瞬間にはアイツにきてほしくない。アイツが俺のことを待って、一分一秒でもなにかを我慢しているのはなにかが違うと思う。
     合鍵が渡せたらいいなって、こういうときに考える。俺が風呂に入ってても、珍しく袋麺を茹でていても、超大作のゲームで感動のエンディングを迎えていても、勝手に入ってきて自由にしてくれていたらいいなって思う。
     勝手でいてほしい。いや、自分勝手は困るけど、二人っきりのとき、信じられないくらい静かなアイツは好き勝手にしてていいと思う。これもバグのひとつなんだろうな。 
     俺が目を離している間のアイツを考える。アイツの美しさについて考える。考えが混じり合って、溶けていく。
     ステージ上、スポットライトを浴びる俺たちの一番美しい瞬間。そんな瞬間は誰だって自分のことでいっぱいで、俺がアイツの最高の瞬間に立ち会えないように、アイツも円城寺さんも俺の最高に美しい瞬間を知らないのかもしれない。
     例えばアイツがひとりでステージに立つ日が来たら、俺はなにに出会うんだろう。花冷えという言葉を思い出したりするんだろうか。

     春一番より暴力的な手がドアをガンガンと鳴らす。花冷えの寒さとは真逆の、熱のこもった鋭利さに玄関ドアが悲鳴を上げている。
     ドアノブを開けば牙崎漣だ。足の先から髪の一本まで、全身まんべんなく牙崎漣。気が乗らないときは真冬だって厚着をして外で眠るくせに、今日みたいな日にはぺらっぺらの服を一枚着ただけで「寒い」と暖を取りにくる。
     冷え切る前の指先。眠そうな瞳。桜の花びらを乗せた銀の髪。なんと、まぁ。
    「……全然美しくねぇな」
     するりと俺の横を通り過ぎる銀のしっぽ。俺の独り言はアイツには届かず正真正銘の独り言になる。コイツは最強にこだわるが、美しくないと言ったら怒るのか、それとも興味すら持たないのか。

     ケトルがお湯を沸かすまでの一分間、俺はコイツを無視して『牙崎漣の美しさ』について考える。
     後ろで寝転がるコイツのことを見ずに、俺の見ることができないコイツのことを考える。
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    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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