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    hairia_hairia

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    学パロ 片思い 堀辰雄『燃ゆる頬』の一部を改作

    #尾形百之助
    Ogata Hyakunosuke
    #ゴールデンカムイ
    Golden Kamuy
    #学パロ
    School Parody
    #二次創作
    secondaryCreation
    #原文改変

    実験室  昼休みも中頃に差し掛かっていた。お気に入りの場所というのは、人を穏やかに上機嫌にしてくれる。それが、ここ植物実験棟の東側にある花壇である。その中を一人で佇んでいると、花壇に咲いてある名も知らぬ花々から、一匹の蝶が飛び立つのを見つけた。蝶は、足に濃橙色の花粉を付けて、愛らしく飾り立てているように見えた。私は、着飾った蝶が次にどの花へゆくのかを、見てみたいと思った。しかし、蝶はどの花にも止まらず、しかも、どの花を選べばよいか、迷っているようにさえ見えた。私は、もどかしい気持ちで眺めていた。…次の瞬間、花々が蝶を自分のところへ誘うべく、一斉に花弁を開き、自らの雌蕊をくねらせ、見せつけている…気がした。私は、その姿態に驚きと気後れを感じたが、気が付けば高揚感に包まれ目を奪われていた。そのうち、蝶はある花を選び、着飾った足でその柱頭にしがみついていた。体を託すように止まる蝶に、花は自ら花弁を動かして蝶をやさしく愛おしむよう包み込んでいた…。やがて、蝶は花を振りほどくように、飛び立っていった。気が付けば、その場には私ひとりきり…先ほど感じていた高揚感から、なんとも低迷な居心地の悪い気持ちへと変わっていた。折角のお気に入りの場所でこんな気持ちになるなんて…暗澹とした気持ちを払拭すべく、目の前の受精を終えたばかりの花をぐちゃぐちゃにしたくて、手に取ろうと…

     「おい、顕微鏡みせてやる…こい」

    花壇と平行に並んでいる実験棟の硝子窓越しに、私を呼ぶものがあった。振り返ると、そこには、私が知っている顔、そう、尾形さんがいた。

     尾形百之助。彼は私より一年上の生徒で、射撃部のエースでもあった。彼は誰に対しても無愛想で、時に浮かぶ表情も、どこか人を馬鹿にしたものがあった。しかし、その相貌は、大理石を想起させる白さと艶のある肌、黒曜石を宿しているような深い眼、濡れ帯びた黒髪を後ろになでつけた髪型、そして、頬に伸びる縫合傷跡…繊細な尾形さんの造形は、その表情と傷跡により、冷たく威圧的な雰囲気を醸し出していた。それは、射撃場に立つとより際立ち、屹然として孤高を保つ冷徹な姿へと変貌していった。そして、彼の後頭部に向かって流された髪の一部が、はらりと耳の横を通って落ちる。それを、大きな掌でなでつける所作が美しく、私は目を奪われた。見たら石に変えられてしまう魔性の話を聞いたことがあるが、その魔性を前にした者たちの気持ちが少しわかった。彼の姿に、憧憬の念を持つ女生徒たちも多く、彼をよりいっそう偶像化させていた。私も、そういう彼のお気に入りになりたい、と常々思っていた。
    なぜ、呼ばれたのか見当もつかなかったが、彼の少し鼻にかかった低い声に胸を躍らせた。私は、浮き立つような足取りで、実験棟の中に入っていった。
     初めて入った、植物実験棟。いくつかあった部屋の中で、実験室と書かれたプレートの部屋に、尾形さんはひとりでいた。彼は慣れた手つきでプレパラートを作り、時に顕微鏡で覗いていた。そして、いつもの表情で私に向き直り、手招きだけで呼び寄せた。近づいた私に、指さしで顕微鏡の置いてある机に付属している椅子に座るよう促し、顕微鏡を覗かせてくれた。しかし、私には椅子が高すぎて、顕微鏡を覗くためには身体を竦めていなければならなかった。


     「見えるか?」
     「あ、はい…」

    私はぎこちない姿勢を取り続けながら、顕微鏡を覗き込んでいた。しかし、顕微鏡を見ていないほうの眼で、尾形さんの動きを窺っていた。それは、少し前から、変化していることに気が付いた。実験室内の白熱球の光がすり硝子に反射して淡く漂っているためか、それとも彼がいつもの仮面を脱いでいるせいか、そこには凄艶とした表情の尾形さんがいた。

     「あ、私も、顕微鏡を触ってもいいですか」
     「ああ、かまわんよ」
     「こうすれば、もっと見えるようになる。どうだ、見えたか?」
     「あ、はい…これで…」

    いつしか、顕微鏡を操作する私の手を、私のとは違う、尾形さんの筋張った硬い手が包み込んでいた。そして、薄ピンクに淡く色づいた彼の口唇が、私の耳朶に触れるか触れないかほどの距離にあった。私は、気づまりを感じていたが、体を竦めて動かせないこと、憧れの人が丁寧に説明してくれることもあり、振り払うことができなかった。しかし、本当は、私の中にある何かを揺り動かす尾形さんを感じて動けなかったのだ。彼の吐く熱い息を首元に感じ始めた時、突然、さっき目にした蝶と花のことを思い出した。私は、居た堪れなくなって、顕微鏡から顔を上げた。

     「もう、私…あの、次の授業があるから…」
     「そうか」 

    口ごもる私をよそに、尾形さんは、いつもの表情に戻っていた。そして、赤くなっている私の顔を見下ろしながら、片方の口角を軽く上げていた。

     実験室から足早に出てきた私は、自分の教室の前で立ち止まり、こんな、はずじゃなかったのに…とため息をついた。淡い期待を持っていたことは、嘘ではない。しかし、いままで見たことのない尾形さんの表情と姿態の前では、どうすることもできなった。そのまま、あの蝶のように包み込まれるのではと…、もし、包み込まれたら…。
    私は…以前のように、尾形さんの姿を見ることができなくなっていた。

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    hairia_hairia

    DONE現パロ オフィスラブ 片思い 名前のこと
    その人の名前は 今日から新しい職場へと配属になる。気分を引き締めたくて、メイクは深めの暖色系でまとめてみた。少しはキリっとなったなと、鏡の中の自分に自画自賛する。新しいことが始まる時はもちろん緊張もするが、なにか胸躍ることも起こるのではと嬉々とした高揚感も感じることができる。我ながら、この前向きな性格がありがたいと思う。
     配属場所へと出向き、部署総括の鶴見部長に今日から配属となります、よろしくお願いしますと挨拶をした。鶴見部長はよろしくと一言だけ言い、皆に私を紹介してくれた。その後、月島課長から部署の概要説明を受けたあと、

     「夢主さんの指導係は、そうだな…ヒャクノスケでいこう」

    ヒャクノスケ⁉頭の中に奇妙を表す符号が飛んだ。それもそのはず、若い人が大半の部署と聞いていたからだ。しかし、私が勤めている会社は、かなりの歴史があると聞いているので、部署にベテランの人がいてもおかしくない。どんな、お爺ちゃんがやってくるのかと思っていたら、呼ばれた彼は、白い肌に黒い大きな瞳、整った鼻筋に髭を生やし、髪はオールバックに整えられて、濃紺色のスーツは本人のためだけに作られたのではと思うほど綺麗に着こなしている若い男性だった。さらに特筆すれば、両頬にある縫合跡がどこか憂いのある表情を醸し出していた。彼は低く艶のある声でよろしくとだけ言って、仕事の説明を始めた。尾形百之助、古風な名前に興味を持ったが、それ以上に存在自体が私の好みで…一目惚れだった。
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    hairia_hairia

    DONE学パロ 片思い 堀辰雄『燃ゆる頬』の一部を改作
    実験室  昼休みも中頃に差し掛かっていた。お気に入りの場所というのは、人を穏やかに上機嫌にしてくれる。それが、ここ植物実験棟の東側にある花壇である。その中を一人で佇んでいると、花壇に咲いてある名も知らぬ花々から、一匹の蝶が飛び立つのを見つけた。蝶は、足に濃橙色の花粉を付けて、愛らしく飾り立てているように見えた。私は、着飾った蝶が次にどの花へゆくのかを、見てみたいと思った。しかし、蝶はどの花にも止まらず、しかも、どの花を選べばよいか、迷っているようにさえ見えた。私は、もどかしい気持ちで眺めていた。…次の瞬間、花々が蝶を自分のところへ誘うべく、一斉に花弁を開き、自らの雌蕊をくねらせ、見せつけている…気がした。私は、その姿態に驚きと気後れを感じたが、気が付けば高揚感に包まれ目を奪われていた。そのうち、蝶はある花を選び、着飾った足でその柱頭にしがみついていた。体を託すように止まる蝶に、花は自ら花弁を動かして蝶をやさしく愛おしむよう包み込んでいた…。やがて、蝶は花を振りほどくように、飛び立っていった。気が付けば、その場には私ひとりきり…先ほど感じていた高揚感から、なんとも低迷な居心地の悪い気持ちへと変わっていた。折角のお気に入りの場所でこんな気持ちになるなんて…暗澹とした気持ちを払拭すべく、目の前の受精を終えたばかりの花をぐちゃぐちゃにしたくて、手に取ろうと…
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    hairia_hairia

    PAST
    衣装お試しにあげてみた。現パロハロウィン X投稿済み

     尾形が言った、ハロウィンなんて行事は聞いたことはあるがやったことがないと。皆で着飾って楽しく過ごすお祭りだよと、微笑みながら説明してみた。クローゼットから出してきた衣装を見て、そんなもんか…と着始める尾形。頭からすっぽりかぶる白のゴーストマント、首に赤い鈴をつけた黒猫の着ぐるみ、骸骨が全身にプリントされた黒の全身タイツ、白黒ボーダーの囚人服、アラブの石油王など、何でもありで着こなしてくれる。いつもなら、文句の一つも言う尾形が、今日は静かでむしろ従順あるいは楽しそうである。それならば…ハロウィンでは大人シックな恰好もするんだよと、クローゼットの最奥から、袖口にフリルをあしらった白いシャツ、カーキ色のベスト、黒みがかったグレーのコートに同色のブリーチズの中世悪魔風衣装を出し、尾形に渡してみた。戸惑いながらも着始める尾形。着終わった彼は、こちらを振り返りどうだと言わんばばかりの表情で、前髪を後ろへ撫でつける。その姿は、最初から着ていたようにしっくりとなじんでいた。しかし、その姿に不可解を覚える。尾形は編み上げの黒いブーツを履いている。ここは家の中ではと思ったが、それ以上に頭とお尻にあるものは…なに?そんなものまで、揃えたむしろ渡した覚えはないと。目線を尾形の顔に向けると、彼の深く黒い瞳がじっとこちらを見据えている。
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