エゴイズムは美しく輝けるか? 儚いもの、と聞いて真っ先に思い付くものは何だろうか。すぐに消えてなくなるもの、形が崩れて地に還ってしまうもの、として認識しているものは一体、何なのだろうか。
「雪の結晶だ」
ある邪神はそう答えた。
熱を持つ手で触れてしまえばたちまち溶けて消えてしまう、冷めた世界でしか形を保てないもの。生まれた瞬間から美しい姿のそれは、小さくて目を凝らしてもよく見えなくて、しかし迂闊に触れたが最後跡形もなく消えてしまう。
かといって手を伸ばさないでいれば地に落ち水となって染み込んでいくか、積もった雪の中に隠れて二度と拝めなくなるかの二択しかない。
散りゆく桜の花や、同じく温暖な世界で永く保たないとされる氷ですら触れることが出来たのに、雪の結晶にはそれすら許されない。生きるという熱を持つうちは、素肌にそれを感じることは叶わない。
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