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    玄武さんと青龍

    東と北「玄武、少しよろしいですか」

    珍しい人物に呼び止められ、思わず足を止めた。
    二人で話す機会はほとんどなければ、会議室以外で言葉を交わすこともいままでなかった相手だ。ゆえに、足を止めたのはこの人が声をかけてきた事自体に少し驚いたのもあった。

    「おや、青龍さん。構いませんよ」

    同じ四聖獣というコードネームを持つ存在の一人、青龍。若いながらも己の目的を貫く芯の強さを持ち、四聖獣の中でも堂々たる姿勢を崩さない存在。
    とても真面目なのだろうと常々関心していたが、冗談を一切口にしない真面目な人間が、自分に何の用だろうか。笑みは崩さずとも、その裏で思考を巡らせていた。

    「歩きながらで結構です、会議室につくまでに終わります」

    さぁ、と歩くように諭す手を見て、隣に並ぶ形で歩き出す。薄く閉じた目はこちらを見ることはなく、真っ直ぐ前を向いたまま口を開いた。

    「先ほど、内部統制、監視を担当するケイの権限削除の申請を受理いたしました。あなたの元に配属になる、CN Bellwetherです」

    Bellwether、名前を聞いてもぴんとこなかったが、頭のなかで配属されるケイの書類を思い出す。懸念していた役職名が書かれていた書類のCNは、そんな字面だったかもしれない。

    組織の規則に反するケイを監視し、最終的に処分を下すチームの中心人物であり、上層部との繋がりも濃い存在。他の四聖獣の元で目を光らされるよりは、手元に置いておいた方が無難な一手だろうと、振り分けの際に申し出た記憶がある。名前の読み方すら気にしていなかったが。

    「そうですか、随分と急な話だ」

    権限の剥奪までは検討していなかったが、想定外の良い一手となった。他人の戦局が自身にも良い結果をもたらすのなら、この四聖獣という集まりは案外悪くないのかもしれない。
    ぽつりと呟くように言葉を返すと、その言葉を予想していたかのようにすぐに切り出した。

    「自ら役職から降りると、本人からの希望になります。よって、一部予定が取り消しになりました。ただ、今後の進行への影響はありません」

    予定が取り消しになる、それは解雇対象者の変更が入ったことになる。我々は、表面上は正しく盤面の駒を動かしているようにみせなければならない。そのために、交わす言葉には多少別の意味を忍ばせなければならない。

    今回の計画に関与する解雇対象者の決定、通達。
    一番必要な駒を動かすために、相手にわざとポーンを取らせるような戦術として『犠牲にする駒を増やす』
    自ら権限を放棄する代わりに、解雇を取り消させたのか。随分情に厚いのか、よほど有益な存在だったのだろう。

    どちらにせよ今後に影響がないのであれば、解雇せずとも問題のない、ただの捨て駒には変わりないが。

    「それならよかった。不要な予定が増えるのは好ましくないですからね」

    「ゆえに、あなたの元に配属される際には、なにも権限を持たぬ一般のケイと同等になります」

    まるで前もって想定していた会話かのように、すぐに言葉を返してくる。必要最低限のことしか話さない四聖獣にしては、回りくどいようにも感じた。
    権限が削除されたことなど、申請が上がったあとにいくらでも知る手段はある。

    「わざわざご丁寧にそのご報告を?」

    少し様子を見るために、横目で相手の表情をうかがう。変わらず伏せた目は、一度口を閉じてからこちらを見た。正確には、その目が自分を映しているのかわからないため、顔を向けた、だが。

    「いえ」

    短く発した言葉に続きはない。その言葉の続きを求めるように首をかしげれば、こちらに向けていた顔は再び正面を向いた。

    「"あれ"は、あなたの想像以上に厄介です」

    次に続いた言葉のトーンは、やけに低く、静かだった。

    「権限を持たなくとも、目を配った方が良いと。これはあなたへの警告です」

    警告。らしくない、とつい笑みがこぼれそうになる。その警告は身を案じるものなのか、自分に対して敵対心を示しているのか。この真面目な青い龍の場合、同じ神の名を持つ存在に対しても、前者の意味合いを持っていそうだが。

    「手厳しいお言葉ですね。新しい部下を迎えるのですから、もちろん配慮するつもりですよ」

    ついこぼれそうになった笑みを、社交辞令程度にお礼の笑顔として見せるも、笑うこともなければこちらをみているのかもわからない。ただまっすぐ前だけをみて、口を閉ざしていた。

    「あなたほどの経験があれば、問題ないと思いますが。念のため」

    「いやいや、おそれ多い。大したことないですよ」

    そう手を振ると、言葉を返ってくることはなく、静かに足を止めた。同じく立ち止まった同僚は、四聖獣との会議が行われる会議室の扉に手をかけ、振り向くことなく一言、呟いた。

    「そう仰る余裕があるのなら、良いですが」
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