インサイドそれはまるで呪いのようだ。
いつでも人は人と関わりあい、呪いをかけ合って生きているのだ。
生まれ落ちた時から、さながら蠱毒の壺の中に居るようだ。
ただ、夢の中でだけ、己は自由だ。
暗い闇の中で輝く紅の瞳。
引きずりだされる腸(はらわた)。
人が苦しみ藻掻く顔。
それはいつも夢の中にある。
穏やかな日常にまぎれ、薄めていかれるような、ひりつく自分の欲望。
『民尾さん』と目の前の相手はにこやかに笑う。もはやその笑顔が呪詛であることも気付かずに。
そんな想いを振り払い、その声に応えてやる。
『なぁにぃい?』
『会長、今度の撮影会ですが…』
上の空のまま、会話の相手のもがき苦しむ顔など、想像してみる。
あぁ、もう決して自分の手の届かない所にあるものだ。
『ふふふ』
民尾は嗤う。
あれは、全て泡沫の夢。
幸せな時であったとも、悪夢のような時だったとも思う。
手を伸ばせば届くような気もする。
だけど、もう二度と手を伸ばしたいとは思わない。
それでも……
『愉しかったなぁ…』
ポツリと言う民尾の言葉に同好会の会員たちは笑う。
『会長、またぼんやりして。撮影会はこれからですよ』
『うふふ、そうだったね』
そうして、自分はまた別の糸に絡められていくのだ。
自由のない幸せに。
きっと自分にはもう別の道はないのだろう。それでもいつでも、己の心は自由だ。どれほどまでに人間の作ったルールが自分を縛ろうとも。
あの紅い双眸を忘れることなどないのだろう。
…それはそれで不幸なのかもねぇえ。
ふふ、あぁ、俺はそれでも幸せだったよ、貴方に出会えて。
穏やかな日々。
これは悪夢なのか、いい夢なのか。
その答えはどこにもない。