あなたのために 深夜零時半。執務室の障子が開く音で、ビクッ、と審神者の身体が跳ねる。ペン先がぶれて、心電図のような横棒が書類に現れた。
「大将、ちゃんとやってたか? これ食べて、ひと休みしようぜ!」
審神者は机の上の書類を下敷きに、半ば突っ伏せるようにしていた。のろのろと音の方を見上げると、そこには盆を手にした厚藤四郎が立っている。満面の笑みが眩しい。
「おかえり~……なんか持ってきてくれたの?」
これ幸いと、力の入らない手で握っていたボールペンを転がした。
「大根餅だぜ。チーズたーっぷりの」
「チーズ! ……深夜なのに、いいのか?」
「おう。歌仙からも許しが出てる」
「歌仙が? へえ、珍しいものを作ってくれたね」
厚はぎくりとする。歌仙の名が出たことで、彼が作った料理であると審神者は誤解しているようだった。
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