今年もよろしく テレビの画面にカウントダウンの文字が踊り、賑やかな音楽と共に新年を迎えた。
「おめでとう〜」と口にしながら、ザクサに背中を預けていたトマリはくるりと身を捩ると、甘く視線を絡ませ、ザクサもそれに答える。どちらからともなく唇を重ねた。
「ふふっ、今年もよろしくね。ザクサ」
「こちらこそ、宜しく。トマリ」
少しお酒が入っているトマリはえへへと笑いながら嬉しそうにぎゅっと抱きついた。ザクサの胸の内がじわっと熱くなる。ニコニコ顔で抱き返すと、トマリのスマホが振動した。
「あら、もう誰かからメッセージが来たみたい」
「そんなの後にしようよ」
トマリの視線がコタツの天板に向いたのが面白くなくてついそんなことを口にすると彼女は「それもそうね」と微笑みながら「初焼きもち〜」とザクサの頬をむにむにと突っついた。そうは言っても彼の心を焦がすのはいつだって彼女なのだから仕方がない。
「──そうだよ、だから俺だけを見てて」
彼女の手を取り、壊れ物を大事に扱うようにしてその甲に唇を落とす。いつもとは違うアプローチにトマリはびっくりした顔をすると、にゃははと照れ笑いを浮かべた。うん、もう一押し。
「……ねぇ、トマリ。今年はしてみたいことがあるんだけど、それには君の協力が必要不可欠なんだよね」
「うん? ええ、私に出来ることなら協力するわ」
「そう言ってもらえると助かるよ。じゃ、場所を変えようか」
「えっ、今からすることなの?」
ザクサはぽかんとするトマリの手を引いて立ち上がらせる。
「勿論。恋人同士がすることだよ」
ザクサがしゃがんで片膝立ちをしたのでトマリは促されるまま立てた方の太ももに腰を下ろした。
「あ、それって──」
ザクサの言わんとすることを察したトマリが腕をザクサの首元に回す。
「うん、姫はじめ♡」
よいしょ、という掛け声と共にザクサはトマリを横抱きで持ち上げた。
「もぅ、みんなと初詣に行く約束、忘れたら駄目だかんね」
「分かってるって、でも俺以外のことは考えられなくするから覚悟してね」
「あら、上等じゃない」
受けて立つわ、と不敵に笑うトマリの唇を奪いながらしっかりと準備を整えた寝室へと向かうのであった。
おしまい。