待ち合わせはPrincess timeで 思わず目を見張るほどピンク尽くしでファンシーな外観が目印のカフェ、プリンセスタイム。この地域で甘いものを美味しく食べるならブラックアウトの元リーダーである桃山ダンジも足繁く通っていたこの店が一番だろう。
店の前まで辿り着いた瀬戸トマリはスマホで時間を確認し、ファンシーなハート形の窓をそっと覗き込む。内装もピンクとハートでいっぱいの店内を見渡せば探し人はすぐに見つかった。独特な和装の青年はお行儀良く席に付きながらも時折スマホへと視線を落とし、時間を確認するような仕草をしている。
さて、どうしたものかしらと腕を組み、トマリは考え込む。
待ち合わせの時間は三十分ほど前。本当はもっと待たせてやりたいところなのだが職業柄、規律と時間に厳しい世界に身を置いているせいか、これ以上時間が経過するのは自分の方がそわそわと落ち着かない。一旦、窓から身を引こうとするとトマリは待ち合わせの相手である和装の青年、石亀ザクサとばっちり目が合ってしまう。ザクサはトマリの姿を視認するやいなや嬉しそうにひらひらと手を振った。しまった、と思いつつもトマリも自然と笑顔で手を振り返す。あんなにも屈託のない笑顔を向けられては応えないわけにはいかない。トマリはふぅと息を吐く。
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