待ち合わせはPrincess timeで 思わず目を見張るほどピンク尽くしでファンシーな外観が目印のカフェ、プリンセスタイム。この地域で甘いものを美味しく食べるならブラックアウトの元リーダーである桃山ダンジも足繁く通っていたこの店が一番だろう。
店の前まで辿り着いた瀬戸トマリはスマホで時間を確認し、ファンシーなハート形の窓をそっと覗き込む。内装もピンクとハートでいっぱいの店内を見渡せば探し人はすぐに見つかった。独特な和装の青年はお行儀良く席に付きながらも時折スマホへと視線を落とし、時間を確認するような仕草をしている。
さて、どうしたものかしらと腕を組み、トマリは考え込む。
待ち合わせの時間は三十分ほど前。本当はもっと待たせてやりたいところなのだが職業柄、規律と時間に厳しい世界に身を置いているせいか、これ以上時間が経過するのは自分の方がそわそわと落ち着かない。一旦、窓から身を引こうとするとトマリは待ち合わせの相手である和装の青年、石亀ザクサとばっちり目が合ってしまう。ザクサはトマリの姿を視認するやいなや嬉しそうにひらひらと手を振った。しまった、と思いつつもトマリも自然と笑顔で手を振り返す。あんなにも屈託のない笑顔を向けられては応えないわけにはいかない。トマリはふぅと息を吐く。
ザクサに見つかってしまったこの状況で待たせる為にわざわざ引き返すのも変な話なのでトマリは店の入口へ向とかい、扉を開けて中に入った。
お姫様に仕える執事のような店主に待ち合わせだと伝え、ザクサの待つテーブルを指差す。テーブルへの案内は断り、トマリはザクサのいる二人掛けのテーブルへと足を運びニコニコ顔の青年に声をかけた。
「どう? 待たされる方の気持ち、少しはわかった?」
ついこの間、ファストフード店で待ちぼうけを食らった話を持ち出しながらトマリはザクサの向かい側の椅子を引き腰を下ろす。
「私は二時間も待たされたけど。捜索時間も含めると、どれぐらいだったかしらねぇ」
トマリはわざと含みのある言い方をした。
あの日、待ち合わせの場所に早く着いたらしいザクサは時間を潰すために入った店の筐体格闘ゲームに触れ、トマリが見つけて声をかけるまで時間が経つのも忘れ没頭していたのだ。
「あはは、それは本当にごめんって」
困り顔を浮かべ、頬を掻くザクサをトマリはじっと上目遣いで見つめる。
「本当に反省してる?」
「してる。してます。だからお詫びのしるしに今日はトマリの好きなものを何でも頼んでいいよ」
どうぞ、とザクサはテーブルのメニュー表を恭しくトマリへと差し出した。
「うむ、じゃ、今日のところは許して進ぜよう」
機嫌を直したトマリはメニュー表を受け取り、先ずは何を頼もうか、とページを捲る。ファンシーな店名、外観、内装と来て色とりどりの可愛らしいケーキやパフェが並ぶ中、おにぎりまであるのはある意味この店一番の謎である。
店主がトマリの分のお冷が入ったグラスをテーブルに置き、ザクサのグラスにもおかわりを注いだ。
「どうぞ、ごゆっくり」
丁寧なお辞儀と共に店主がテーブルから離れて行くのを確認するとザクサは自分のグラスを持ちながら「──ところで、トマリ」と話を切り出した。
トマリはメニュー表から視線を離さず、メロンのパンナコッタパフェとオレンジタルトのセットに頭を悩ませながら「う〜ん、なぁに」と相槌を打つ。
「ちょっと小耳に挟んだんだけど、メグミ達とのお泊まり会で体操着を着てたって話、本当?」
「……本当だけど、それがどうかしたの」
トマリはメニュー表から顔を上げ、怪訝な表情でザクサを見つめる。
「俺、見たことないんだけど」
「へ? そりゃあ、見せたことないもの。あれは偶々昔の服が出てきたから、お泊まり会で着てみたらウケるかな〜って思って持っていっただけだし」
ちなみにややウケだったわ。とトマリは胸を張る。
「トマリの体操着姿、俺も見たいなぁ。色は何色? 丈はどれぐらい?」
「──え、なんかイヤ」
トマリはメニュー表を閉じて軽く身を引いた。
「え〜、メグミ達には見せたんでしょ」
ザクサはトマリの両手を握り「ねっ」とおねだりするように小首を傾げる。
「見せたけど、ザクサの食いつきが良すぎてなんか嫌。可愛こぶってもダァ〜メッ!」
「いや、そこをなんとか」
「そうやって頼み込まれるとますます嫌なんだけどっ」
「こら、そこ! 何を揉めてるのかよくわかんないけど、揉め事はカードでしょ」
二人がやいのやいのと騒いでいると、隣のテーブルとの目隠しがわりに隔てている観葉植物の上からひょっこりと制服姿の大倉メグミが顔を出した。
「あら、メグちゃん、居たの」
トマリはザクサの手を離し、メグミの方へと顔を向ける。
「居たよ。ウララちゃんと新作のパフェ食べに来たんだ」
「お二人とも、こんにちはっ、です!」
身長が足りないせいか羽根山ウララはぴょんぴょんと跳ねているが頭ぐらいしか見えていない。
「ウララちゃん、こんにちは。今日も元気いっぱいね」
「二人共、こんにちは」
知り合いの目を意識してか、ザクサも大人しくいつも通りの態度に戻っている。
新作のパフェと聞いて、トマリはメニュー表とは別にテーブルに置いてある縦長のスタンドメニューを手に取った。ザクサもトマリの手元を覗き込む。新作のパフェとやらは『ビッグかにかにパフェデラックス!』と銘打たれていた。
「え、この新作パフェって三〜四人用って書いてあるわよ。いくらウララちゃんがけっこう食べるっていっても女の子二人じゃ厳しんじゃない?」
「そう? でも、もう注文しちゃったし、大丈夫、なんとかなるって!」
トマリの心配をよそにメグミは元気いっぱいな様子で答えた。ポジティブといえば聞こえは良いけど、後先考えないところが何だか本当にダンジに似てきたわね、とトマリは呆れたように苦笑いを浮かべた。
「そんなこと言って、この店のパフェ一人前って考えると結構大変よ」
トマリは両手でピースを作り、指を動かして、かにかにとジェスチャーをしてみせる。
「う、それを言われちゃうと……。だ、大丈夫だよ! たぶん……」
メグミは狼狽えながらもぐっと拳を握ってみせるが声色がちょっぴり弱気なものに変わっていく。隣のウララも「お姉様……」と心配そうな声を上げた。
「ん〜。ザクサ、今日の奢り、このパフェでいいかしら」
チャレンジメニューの類いではないにしろ、若人が困るかもしれない展開を前にしてを放っておくことは出来なかった。
「うん、それは勿論構わないよ」
「ありがと」トマリはにこっと微笑む。
ザクサの了承も得られたのでトマリはメグミに向かって提案を口にした。
「ねぇ、メグちゃん。その新作パフェ、私達もご一緒していい? 支払いもこっち持ちで」
「えっ、それは助かるけど、いいの? あっ、でもお会計は──」
半分出すよ、というメグミの言葉をトマリは制すように片手を出して遮った。
「いいの、いいのっ。どのみち今日はザクサの奢りで甘いものを食べる予定だったし、皆でわいわい食べるほうが私も楽しいもの☆」
グッ、と親指をサムズアップさせてトマリはメグミにウィンクを送った。
「じゃ、そっちに移動するね」
ザクサは自分とトマリのグラスを持ち、席を移動するとトマリもその後に続いた。そして、メグミとウララ、ザクサとトマリが横並びで向き合う形でテーブルにつく。
「でもさ、トマリが言うように大っきなパフェだったとして、ザクサはあんまり戦力にならなそう。フルーツだけでも頑張って食べてよね!」
メグミはザクサに向かって発破をかけるが、トマリはそれを聞いて不思議そうに首を傾げた。
「うん? メグちゃん、この子も結構食べるわよ?」
「──えっ」
トマリの一言にメグミが固まる。
「朝からラーメン食べた後に追加で特盛りとか平気でイケるし、暑い時にわざわざ辛麺とか食べて意外と食欲旺盛よね」
そうトマリに話を振られたザクサは涼しい顔でグラスの水に口をつけていた。
「はぁぁぁ! 何それ、じゃあ、ザクサ、あんたあの時もっと8番ラーメン食べられたんじゃない」
メグミは椅子からガタッと立ち上がり、巨大ラーメンを必死でつついたあの時の苦労は何だったのか、とザクサに向かって吠えかかるが目の前の青年はどこ吹く風といった様子で聞き流している。
「お姉様、どうどう」
イマイチ状況が飲み込めないウララだったがメグミに抱きついて宥めると彼女はむむむ、と不服そうにしながらも、大人しく椅子に腰を下ろした。
「あの時はそういう気分じゃなかったんだよねぇ。トマリもいなかったし」
ザクサは懐かしむように宙を見上げたかと思えば、そのまま隣に座るトマリに視線を移した。その言葉にメグミは「はぁ?」と訝しげに片眉を上げ、話を振られたトマリは「えっ、私?」と小首を傾げる。
「うん、君の前でならカッコ悪いところは見せられないから頑張れるんだけどね」
「ザクちゃん……。もぅ、どうせその方が面白くなるから、ってそうした癖に」
この悪い子、とトマリがザクサの頬を指先でうりうりと小突く。
「ふふっ、そんなことないよ。──嗚呼、でも、トマリがお仕置きしてくれるのなら大歓迎」
「ホント、困った子ねぇ……」
トマリは小突いていた指先をつぅ、とザクサの顎の下へと滑らせた。
「トマリ……」
互いを見つめ合う二人。目の前の大人達が勝手に自分達の世界を構築し始めたので、自分だけカッカしているのが何だか馬鹿らしくなったメグミはげんなりした様子で「はぁ……」と大きく溜息を溢し「ったく、プロレスの時といい、どういう神経してるのよ……」と小さくぼやいた。
「はわわッ! お、お二人は本当に仲が良いんですねっ! ねっ、お姉様!」
うっとりとした表情を浮かべるザクサと妖艶に微笑むトマリの姿は何だか見てはいけないようなものな気がして、ウララは赤面しながら慌てて視線を逸らしながらメグミに話を振った。
「はいはい、いちゃつくなら他でやってよね」
メグミがテーブルに肩肘をつきながら片手でしっしっと追い払うような仕草をするとハッとたトマリは「あら、失礼」と照れ笑いを浮かべ、佇まいを正した。
一悶着あった空気がテーブルから霧散すると丁度いいタイミングで『ビッグかにかにパフェデラックス』の姿がお目見えする。花瓶と見紛うほど大きなパフェグラスにたっぷりの生クリームとアイスが盛られ、カニを模したフルーツの飾り切りが四方を囲み、更にそれを彩る色とりどりのフルーツに加えケーキまで刺さっていた。
堂々たる巨大パフェを前にした四人が「おぉぉ…!」と揃って感嘆の声を上げると、ワゴンに乗せて運んできた店主は誇らしげに胸を反らした。四人分の器とカトラリーを置き、「どうぞ、お楽しみ下さい」と深くお辞儀をするとワゴンを押しながらスマートに去っていく。
「〜〜でっかぁッ! お姉様、私、こんなに大っきなパフェ初めてです!」
「はは、これは、なかなか……、トマリ達が一緒で良かったかも」
「これもある種の芸術だねぇ」
「採算取れてるのかしら、こだわりと男気を感じるわ!」
四人は柄の長いパフェスプーンを片手に各々感想を口にする。
「よぅし、それじゃ、溶けちゃう前にいただきますかっ!」
トマリが意気込んで声をかけるとザクサとウララも「「お〜!」」と声を揃えた。
「あっ、待って待って! アニキにパフェの写真、送るから!」
メグミは慌てて三人を制し、制服のポケットからスマホを取り出すとカメラを起動させる。
「メグちゃん……、ダンジ相手に相変わらず健気ねぇ」
トマリがほろりと涙を拭うような仕草をするとメグミは「べ、別にいいでしょ! 茶化さないでよ」と頬を染めた。
「茶化してなんかいないわ。ほら貸して、パフェと一緒にお姉さんが撮ってあげる」
「うん、ありがと……。ウララちゃんも一緒に写ろう!」
メグミはスマホをトマリに渡すとウララに向かって声をかける。
「はい! お姉様」
「じゃあ、俺が撮るからトマリも入りなよ」
「そう? じゃ、お願いね」
メグミから預かったスマホをザクサに渡し、トマリもメグミ達がいる方へと移動した。メグミを中心にして巨大パフェを取り囲み「一+一は?」とザクサがスマホのレンズを向けると三人は「にぃ〜!」と声を揃え満面の笑みでピースサインを作った。
「送信っ、と」
ザクサからスマホを受け取ったメグミはここにいるメンバーとダンジにはメッセージを添えて写真を送る。大の甘いもの好きのアニキが見たらきっと羨ましがるだろうな、とメグミは満足気に微笑み、スマホをポケットにしまう。
「待たせてゴメン。じゃ、今度こそ食べよっか。いただきます!」
メグミの号令に合わせ皆それぞれ「いただきます」と手を合わせ巨大パフェへと手を伸ばした。
「ん〜! 美味しい。わ、ウララちゃんこのアイス、プリンみたいな味がするよ」
「お姉様! こっちのブラウニーも濃厚で美味しくてほっぺたが落ちちゃいそうです〜」
ウララは両手を頬に当てると、ふるふると嬉しそうに振ってみせた。巨大パフェは順調なペースで減っていく。
「うう〜ん、とろっと甘いマンゴーがまた最高ねぇ。いくらでも食べられちゃう」
うっとりと南国の果実を幸せそうに味わうトマリをニコニコと見つめ、ザクサはいそいそとトマリの器にマンゴーを移す。
「トマリ、気に入ったのなら俺の分もあげるよ」
「あら、嬉しい。お返しに、はい、あーん」
トマリは飾り切りの林檎を指で摘むとザクサの口に運ぶ。
「あーん」
うん、美味しい。とザクサはもぐもぐと口を動かし、与えられた林檎を咀嚼する。
「ったく、またそうやってところ構わずいちゃつく。そういえばさ、忘れてたけどさっきは二人とも何で揉めてたの?」
何気なく湧いた疑問。もう残り少ないパフェを口に運びながらメグミはほんの数分前にトマリ達へと話しかけた時の状況について尋ねた。
「あ〜、あれは、なんというか……、うん、別になんでもないのよ」
あはは、とトマリは誤魔化すように笑い、「本当だ。このアイス、プリンの味がするぅ〜」と話題を逸らしたが、ザクサの方は違った。
ハッとした表情を浮かべたかと思えば、ずいっとメグミとウララに向かって身を乗り出したのだ。
「二人とも。お泊まり会をした時のトマリの写真とか持ってない? 体操着姿のやつ。言い値で買うよ」
ザクサの突然の申し出にメグミとウララは疑問符を浮かべ「はぃ?」と顔を見合わせる。それを聞いたトマリは「うっ」とパフェを口に運んでいた手を止め、まだ諦めてなかったのか、と顔をしかめた。
「こら、やめなさい。あなた達、絶対に渡しちゃ駄目だかんね!」
トマリはザクサを押しのけ二人に向かって「絶対に駄目!」と強く念を押すが、ザクサが「えぇ~」と抗議の声を上げるのでトマリは彼をヘッドロックで抑え込んだ。
「──ええと、ザクサさんはなんでそんなにトマリさんの体操服が見たいんです?」
困惑した表情を浮かべながらウララは疑問を口にする。
「……うん、俺とトマリは歳が離れてるからね……、同じ時を過ごせなかった分、少しでもそういった姿を目に焼き付けて、欠けた思い出の欠片を埋めたいんだ……」
するりとトマリの腕から抜け出し、うら寂しそうに告げたザクサの陰りのある姿は少女達の同情心を見事に掴んでみせた。
「トマリさん、ザクサさんもこう言ってますし、見せてあげてもいいんじゃないでしょうか……」
「確かに……、私もアニキの学生服とか見たいかも。トマリ、体操着ぐらい別に良いじゃん」
善意の気持ちでトマリを説得しようとする二人の姿にトマリは堪らず声を荒げた。
「こらこら、こらッ! いたいけな少女達を唆すな。大体、卒アルが見たいならいざ知らず、妙齢の女性の体操着姿が見たいなんて、絶対やましい気持ちがあるに決まってるでしょ!」
「俺は卒アルも見たいよ」
間髪を入れずにザクサが片手を上げて挙手をするとメグミとウララもそれに賛同した。
「あ、それ私も見たい。今度ワンダヒルに持ってきてよ、トマリ」
「私も見てみたいです!」
「ちょ、ちょっと! あんた達まですっかりそっち側についちゃってない?」
どうにも旗色が悪いのを感じてトマリは慌てる。いや、もう、このザクサを後押しする空気は変えられない気がした。こういう時に自分の我を通すにはもうこれしか残されていない。
「〜〜っ! 分かったわ。かかってきなさい! 三人ともッ! 腹ごなしに全員やっつけてやらぁ!」
やけっぱちになったトマリがデッキを取り出し構えると、三人も「うん」と頷きデッキを取り出した。
☆☆☆
メグミが家路につき、パジャマに着替え、そろそろ寝ようかとスマホを確認すると丁度未読だったパフェの画像に既読の表示がついたところだった。続いて『いいな、うまそう』というメッセージが表示されたのでメグミは慌てて通話ボタンをタップした。
「──んで、それからどうなったんだ?」
「うん、とりあえずお店でファイトするのは迷惑になるからって、そのままワンダヒルに行ってトマリ対私達の三本勝負になったんだけど、なんかもう凄かったよ。トマリの勢いが」
「ハハッ、じゃあ、トマリの三本勝ちか? アイツ譲れないもんがあると強えからな」
「ザクサ、トマリのことかなり追い詰めたのに引っくり返されて負けたからへこむのかなって思ったら嬉しそうに笑っててさ、結局トマリが嬉しそうならなんでも良いんだもん」
「それも、アイツらしいな」
ダンジは懐かしむように呟いた。
「──で、アニキはいつこっちに帰ってくるの?」
「あ〜、それが、もうちっとかかりそうな案件でさ。終わったらちゃんとそっちに顔出すよ。そのビッグかにかにパフェデラックス? 一緒に食べようぜ!」
「うん、楽しみにしてる。あ、どうせミレイちゃんのことも待たせてるんでしょ」
電話越しにダンジがうっ、と言葉を詰まらせたのが分かった。メグミはやれやれと肩をすくめる。
「じゃあさ、ミレイちゃんもこっちに連れてきてよ。それで一緒にパフェ食べよ。アニキ、約束だからね」
「おう! 任せろ」
ホント、返事だけは良いんだから、と呆れながら他に起きた近況を伝え、笑い合い、最後はおやすみを言って通話を切った。
「…………ふぅ」
パジャマの上からカーディガンを羽織りメグミはバルコニーに出て夜空を見上げる。
「約束、破ったら許さないからね、アニキ」
《完》