と、「なにが好きなんですか」
「なんだ突然」
「先輩なにが好きなんですかって」
「なんで」
「俺、先輩のことなんも知らないなと」
「そう?」
「ですです。いや、基本情報はわかりますよ」
「基本情報」
「名前、身長、職業、現住所他」
「充分だろ」
「えー。でもほら、パーソナルな部分?的な?」
「充分だろ」
「で、なにが好きなんですか」
「……」
「なんですその顔。めんどくさそうなのやめて」
「めんどくさいよ」
「めんどくさくない」
「面倒だ」
「はよはよ」
「……辛いものは好きだよ」
「はい、はい」
「最近、芝居も好きかな。舞台たのしい」
「わかる。たのしいですよね」
「それとこの場所も、好きと言えるんじゃないか。カンパニーのこと」
「それはもうでしょうね」
「……」
「と?」
「もしかして俺はつまらない人間なのかもしれない」
「いや〜それは、どうだろう。俺はおもしろいと思いますけど」
「ありがとう」
「い〜え」
「お前のことも好きな気がしてきた」
「そんな照れますって。どの辺が好きですか」
「めんどくさいな」
「重要なところでしょ」
「全然」
「たくさんあり過ぎて困ってます?」
「お前恥ずかしくないの」
「恥とかないですね。先輩にもないでしょ」
「あるよ」
「ないよ」
「ある」
「あるんだ、かわいいですね」
「至」
「……」
「至って名前、良いよな。好きだよ。でもこれは親御さんの功績かな」
「……」
「至という名前の通りある意味向上心の塊だろ、お前。ここまでやると決めたところまではきちんとやるところとか。名の通りの生き方をしているのはお前自身だから、そういうところが好きかな」
「……」
「どうしたの、顔が赤いよ。恥ずかしいのかな」
「……」
「それで?」
「……この前実家行ったとき」
「正月?」
「です。どんな人か聞かれて、先輩のこと」
「ああ」
「何にも知らないなって思ったんです」
「そうかな」
「とにかく思ったんです」
「そうか」
「そうです」
「俺は結構見せてるつもりだけど、茅ヶ崎には見えてない?」
「見えてますけど。気づいてないだけかも」
「そうだな」
「そうですかね」
「そうだよ」
「うーん」
「俺のことはともかく、自分のことはもう少し信じていいんじゃないか」
「……先輩、俺のこと好きですか」
「まあ、そうだな。好きだよ」
「俺はね、ゲームと舞台とここのやつらとジャンクな食べ物とアニメとラノベと家族と千景さんのこと好きです」
「そう」
「ですです」
「……」
「……」
「……」
「……先輩の家族のひとにさ」
「うん」
「紹介するとき、俺のこと、使っていいですよ今の」
「ああ」
「はい。先輩のこと信じてますよちゃんとある程度は」
「ありがとう」
「いーえ」