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    いちか

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    騎空艇の鍵の話

    「では、これを」

    ユリウスはアルベールに手を出させると、そこへ手にしていた物を落とした。片掌に丁度乗る重厚な金属のそれは、「Yurius」と彼の名前が刻まれた札が付いていた。今し方搭乗したばかりの騎空艇で充てがわれた個室の鍵である。

    「本当にいいのか……?」

    まだ納得がいかないといった顔で鍵をまじまじと見詰めるアルベールの手を下から包んで握らせる。上からも掌を乗せ、両手で彼の手を包むと、小さく首を縦に振った。

    「私は研究要員として呼ばれたようなものだからね。部屋を出る用事は殆ど無い。それに部屋を態々訪れるのは親友殿ぐらいなものだよ」

    ユリウスからの提案は他意もなく至極合理的な筈だった。しかし、アルベールは他に何かを思いついたのか、別な提案をする。

    「なら、俺の鍵はユリウスが持っててくれ」

    アルベールがポケットを探り、自分の鍵を見つけると、ずぃとユリウスの前に差し出した。

    「……どうせ、研究だ何だとそこいらに資料を溢れさせるんだろう?それなら……………」

    そこまで言って自分の言葉に他の意味が含まれてしまうのに漸く気付いたのだろう。
    自分から部屋の鍵を突き出しておきながら、アルベールの声の覇気は徐々に失われ、代わりにほんのりと首筋から耳朶へ朱が色付いていく。
    最後はただ唇だけが音の無い言葉を紡ぐだけになった。

    「それは、毎宵のお誘いと受け取って良いのだね?」

    その言葉に、顔は更に赤く染まる。首は動かず、代わりに喉が鳴らされるのが聞こえた。
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    4230Eri

    DONE料亭の料理長❄️×短期バイトの🍑
    ユキ←モモ
    ※ドラコレ秋2の衣装からの妄想
    ※冒頭みたいな所で終わってます
    ※本編とキャラの呼び方が違います
    餌付け係と味見係「ここ、であってるのかな」

    スマホの地図アプリから、案内を終了するアナウンスが流れる。足を止めて視線を上げると、そこには立派な門構えの店が立っていた。まだオープンしたばかりだが、某有名店の系列だという日本食の店。いや、正確には料亭、という方が正しいだろう。門から店の入口まで続く石畳の道、きちんと手入れされているのがひと目でわかるほど整えられた木々たち、店の周りを柔らかく照らす街灯。俗っぽい言い方だけど、The料亭って感じの雰囲気が醸し出されている空間だ。

    オレがここに来た理由は、この料亭が募集を出していた短期バイトの面接を受けるためだ。料亭が短期バイトなんて取るのか、という素朴な疑問はあったのだが、秋から冬にかけては客足が増えるため、人手を増やしたいのだという。また、料亭としてやってはいるものの、あまり敷居を高くしすぎないようにしたい、というオーナーの希望もあるらしい。新しい人を入れることで、店の雰囲気も固くなりすぎないようにしていきたいのだそうだ。
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