ユリウスの隣では、今猫が鳴いている。というのは物の例えで、実態は完全に酔ったアルベールがその肩に凭れ掛かって管を巻いているに過ぎない。
「今日は随分とペースが早いじゃないか」
「…………誰のせいだと思ってる」
手にしていた葡萄酒のグラスを置き、空いた手で柔らかな金の髪を撫でると、それにじゃれつくように伸びた両の手が掌を掴んだ。
「またつまらない焼き餅を焼くのかい?」
「……なら、団長とあまり懇意にしないでくれ」
掌に彼の唇が触れる。それから吐息がかかった後一際大きく口付ける音が響いた。指の付け根に舌を這わせ、ともすれば口淫を施す様な蕩けた瞳で此方を見上げる。
「お前が、俺の知らない顔ばかり見せるんだ。不安にもなる……」
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