悪周期の話.
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十一月三日 雨
「あれ、ロビン先生は?」
誰もいない厨房をのぞき込み、ツムルが素っ頓狂な声を出した。いつもならばそこで元気に夕飯を振る舞っているロビンの姿が、今日は見えなかったからだ。
「悪周期、ですって」
オリアスは、なるべく声を平淡に保つよう努めながらそう返した。食料棚の前に立ち、手元につかんだカップ麺の蓋を見る。視線はそこに記されている文字を追っているが、頭には一切入っていない。
選ぶだけ無駄だ。どうせ、今日は食べられやしない。
そう諦め、適当に一番手前のものを取り立ち上がる。
「あれ、食べていかないんですか」
そう尋ねてきたツムルに肩をすくめてみせる。〝いつも通り〟に。
「やりかけのものがあるので」
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