その後責任を取った 眩しい光が顔に降りかかって環は思わず目を覚ました。
見慣れない場所にきょろきょろとして、それからすうすうと寝息を立てる隣の人にはっとした。
昨日は環の二十歳の誕生日で、壮五と二人でホテルに泊まったのだ。
朝の光が少しだけ煩わしいというように壮五の顔が歪んでいたから、慌てて起き上がってカーテンを閉めてやろうとすると壮五の眉が更に険しくなった。
「…………」
環が元の場所に戻ると壮五はまた安心したようにすやすやと眠った。ついでにがっしり腰に腕を回しているから実は起きているんじゃないかと思ったけど、眠っているらしい。
壮五と同じ部屋に泊まることはもう恋人になる前からだったから当たり前だった。
それでも壮五よりも早く目を覚ますなんて初めてかもしれない。少しでも壮五が気分良く眠れるようにシーツをかけてやる。
「すご、かった」
昨日、壮五と初めての夜を迎えた。
壮五からそういうことをするのは環が二十歳になってからだと言われていたからそれまでが随分と長い準備期間だったと思う。
でもそれは別に苦痛でもなんでもなくて、ただ壮五のことが大事だと改めて実感するまでの期間だったようにも思う。
その間壮五は環にも内緒でずっと準備をしてくれていたことを知って頭が沸騰しそうになった。
自分が思っているよりもずっと壮五は環のことが好きなのだと言われたような気がした。
そんな恋人の姿を見て我慢とか、そんなのができるわけもなく要するにがっついた、というやつだ。
そんな環に眠そうな目で、舌ったらずな声で「たまきくんとくっついてねむりたいな」と恋人に言われたらそうしない選択肢なんてなくて、今壮五は環が着ていたバスローブを羽織るだけの格好になっていて、ちらちらと壮五の白い肌が見えてなんというか目に毒な気がした。
いつか壮五のことをプロデュースして撮影したことがあるけど、あの時よりもずっとずっと。
じっと眠ったままの壮五を見るとほわほわと心の奥からよくわからない気持ちが溢れてきそうで、もしこの気持ちが目に見えるのだとしたらきっと部屋中に溢れかえってしまうんじゃないかと思うようなそんな気持ちで耐え切れずに壮五にキスを一つ。
昨晩何度もしたような求め合うキスではなくてほんの少し触れる程度のキス。
するとゆっくりと壮五の目が開いていって思わず環はびくりと身体が跳ねてしまった。
まるでお伽話に出てくるキスをしたら目が覚めたお姫様みたいだ。壮五はどちらかといえば王子様だけど。
「おはよう、たまきくん」
「おはよ、声、ちょっと出しづらい?」
「うーん…」
いつも聞きやすい彼の声が少しだけ掠れている。だって昨日、
ぶわりと環の顔が赤くなって、その顔を見て壮五も頬を赤らめた。
不意に壮五が環の腕を引っ張った。
「おわっ」
そのまま環が壮五の上に倒れ込むと壮五が環の首に腕を回した。
「声、出しづらい。から、責任とって」
そう言って顔を近づけてくる壮五は責任を取らせようとする顔じゃなくてキスをしようとしている顔だ。
だから、「待って俺まだうがいしてない」と言えば「そんなのいい」と返ってきて、壮五はぐい、と環を引き寄せた。
ふに、と唇を押し付ける可愛いキスはすぐに終わって、環が壮五の舌をちゅ、と吸えば壮五が目元を緩ませる。
朝に似つかわしくないようなキスに変わるまでそう時間はかからなかった。