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    mana0210FNaF

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    mana0210FNaF

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    ミッドナイトとラビッツロゼッタの話。館どんな出会い方をしたのか捏造しつつ、若干ミッドナイト→ラビロゼ気味

    「ねぇ」知っていた。あの船が着陸したことを
    中に誰が乗っているかも

    年中一面の銀世界を作り続けるこの星にある館から見えていたその船は銀世界に負けず劣らずの白で構成されているが、中に乗る者たちはそれなりに様々な色を身にまとっている
    そんな事はどうでもいいのだ
    館の廊下に飾られた1人の船長の話をゆっくりと順を追って眺めながら前へ前へと進む。地につける足はないから、雰囲気を醸し出すための足音は残念ながら出せないが
    悠長にしている場合でもないが、実際に着陸した船の船員達がこの館に辿り着くまでには時間がかかるだろう。お人好しの奴らのことだろうから
    迷子になりそうな館を瞬時に移動する技を駆使して悩むことなく進んでいく。窓が割れているせいであちこちに雪が積もっていたり氷柱が形成されていた
    入ってきた者を阻むような寒さにムッとすると、持っていた扇子を開き大きく薙ぐ。それと同時に吹雪くような寒さは道を開けるようにして、真ん中だけを避けて通るようになった
    満足気に扇子を閉じると、再度歩を進める

    隠し扉をいくつか抜けていくといつの間にか壁が段々と本棚へ変化していった。なんとなしに目に付いた背表紙に手をかけ引き抜いてみる。ふ、と冷たい息を吹いてやれば軽く積もっていたホコリが舞い上がった
    適当に真ん中あたりのページを開いてみる。星のことについてビッシリと、それでいて注釈代わりの絵
    ふぅん、と興味なさそうな声が自然と口から出る。紙を捲ることも無く硬い表紙が平行になるよう、否、本を閉じると足元に積まれていた本の1番上へと無造作に置いてその場を離れた
    本棚の隙間には先程見ていた船長の話の続きが描かれていた
    船に突っ込んできたラビッツの話

    その絵画の続きを、と
    ふと最奥へと目を移した

    誰かが本を読んでいる
    あまりにも静かだから気が付かなかった。いや、本に埋もれていたのか
    ポツンと、最奥の真ん中でゴソゴソと積み上げられた本をパラパラと読んでいるのか定かではなさそうな速度でめくり、閉じ、交換する
    すい、と近付いて覗き込んで見れば自分の淡い青みを帯びた影がそのラビッツの読んでいる本にも落ちた。それでも気にせず本に目を走らせる
    ブロンドというよりは栗色に近い髪、ほとんど伏せられているような青い瞳、銀の王冠、身丈よりも若干大きい服
    「ねぇ」
    思わず声をかけた。普通手元が暗くなれば顔を上げるぐらいはするのではないか?そう思ったのだ
    大抵の同族達は自分を見ると驚いた顔をする。私はそれが好き、あまりにも滑稽だから

    だが、その考えは甘かった。声をかけたにも関わらず、そのラビッツは全くこちらを見ない。なんなら身体のどこも声に対して反応を示さなかったのだ。驚きで思わずたじろぐが、もう一度声をかける
    「ちょっと?」
    「…………」
    本を捲る音が返事とでも言うかのようだが、捲るペースからして絶対に違う。無視されているという事に腹が立ってくる。いや、多分他のハンターたちも同じ気持ちには流石になるだろう

    「こっちを見なさい」
    ここでカッとなったら負けだ、と自分に言い聞かせ扇子をパチンと閉じると本だけを見ていたその顔を両手で挟み強引に上へ向けた
    「うっ…」
    急に上げられて呼吸が少し狂ったのだろう。何?という気持ちも大分含められたような声が彼女から漏れた
    「………何?今本読んでるんだけど…」
    ぶっきらぼうに、驚く素振りは一切なく、面倒くさそうに
    「失礼しちゃうわ!」
    パッと手を離すと閉じたままの扇子でそのラビッツの頭を少し強めに叩いた
    「あいたっ」
    膝に乗せていた本がするりと床へ落ちる
    叩かれた部分を擦りながら、不満そうな目がこちらを見上げる
    「なんなの……」
    「ヒトと話す時は普通目を見るものよ。あなた本当に無礼ね」
    「知らないよ」
    そっちが勝手に話しかけてきてただけじゃん、とぼやくとずり落ちた本を閉じて高くなった本の山へ更に積み上げる

    「何をしているの?」
    懲りずに本を開こうとする同族へ、ほんの僅かな興味を落としてみる
    「調べ物、あと捜し物」
    「捜し物?何を…?」
    「見て分かったり…しないか。知ってる人は意外と少ないからね、逸話とかはあるけど詳細な話が載ってるものって少ないから」
    いつの間にか目が合っていたラビッツは、淡々と答える。抑揚が少ないのは、それすらも面倒くさいからなのか?
    「ふぅん」
    空中で両手を顎に当て、寝そべるような形になるとそのままゆっくりと近づいた。少し曇った星型のイヤリングに、自分の青が写し込まれる
    また下を向いてしまったラビッツにつられて自分も本へと視線を落とす

    "その年の█████の空には、
天をおおうほどの大きな「ほうき星」がありました。
百年に一度訪れるその「ほうき星」からは、たくさんの星くずが降りそそぎました。
大地に落ちた星くずは、████たちによってお城にあつめられ、
とても大きな██████に、生まれ変わったといいます。
それは、王国にとって幸せなことでした。"

    御伽噺の一節だろうか。知らない話だ。星と聞いて自分たちが求めているスパークス、それと何故か自分たちを纏めるボスのことを思い出した
    「…これはもう見たやつか」
    そう呟かれた言葉に、顔は自然と彼女へ向く
    関連した話はどれに載っているのも同じ文献、そう言いたいらしい。ほんの一瞬だけ、ラビッツの眉間にシワが寄って、すぐに解かれた
    「同じ本を読んでいるの?」
    「違う。同じ文章ばっかりなんだ」
    もっと調べる時間が欲しい、とボヤきながら彼女はこの部屋への入口を見た
    ああなるほど
    この子には誰か一緒にいるヒトがいるのか
    そういえば、館前で凍っている男がいた。必死で扉を開けようとして無様に凍え、凍りついた
    あれか

    「ねぇ?誰にも邪魔されなくて、沢山読める時間と場所。あげましょうか?」
    その言葉に、まどろみを常に帯びていた目が開かれパッとこちらを向いた
    「どういう風の吹き回し?"スパークスハンターさん"」
    なんだ、知っていたのか。まあそんなことはどうでもいい。一瞬でもこちらに向けられた期待と喜びと、縋るような眼差し
    優越感で上がってしまう口角をパッと開いた扇で隠しながらクスクスと笑って誤魔化す
    「あら、ただの親切心よ?余計なお世話だった?」
    何か言おうと口を開いた文献の彼女に似た姿をしたラビッツは、顔はこちらを向いたまま目線を泳がせる

    「………いや」
    否定と肯定の言葉。同じ目線になるように体を下ろすと、今度は声をかける前に彼女の目がこちらを見た。なんて、可愛いのだろうか
    「嘘じゃない?」
    「嘘なんかつかないわ!これでもそれなりに正直者よ?」
    パチン、と指を鳴らす。それと同時に地面から、壁から、天井から。様々な場所の隙間から黒い触手がうねりながら現れる
    「大丈夫…痛くも怖くもないから」
    「…そう。ひとつ聞いてもいい?」
    「ええいいわよ」
    「どうしてこんな事してくれるの」
    「…ふふ、愚問ね。みずくさい事言わないで?だって私たち」

    「"オトモダチ"でしょう?」


    ねぇ、ラビッツロゼッタ
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