モラ魈「すまないな、突然伽に呼んでしまって」
「いえ…、ですが、我には経験も知識もなく」
「そこは気にしなくても良い。今回お前を呼んだのは口実が欲しかっただけだからな」
「口実、ですか?」
「あぁ。最近、俺の伴侶にしてほしいという者が多くてな。諦めさせようにも理由を問われ敵わん。故に、お前を呼んだわけだ。人前で声をかけたから今頃話が広まっているだろう」
「そうだったのですね…」
「だから今夜はこの部屋にいてほしい」
「承知いたしました」
「それと…、お前を選んだのは口実だけではないから安心してくれ」
「それはどういう…」
「お前さえよければ、本当に伽をしても構わぬということだ」
「なっ…」
「まずは手始めに共に寝台で横になろう。おいで…」
「は、はいっ…」
「ふむ、今日は良い香りがするな」
「夜叉の者たちが湯浴みを手伝ってくれました。その時、香を焚いていたのでそれかと」
「なるほど。清心の香りか。なかなか良い趣味をしている。さて、お前はこれからどうされたい?」
「と、いいますと?」
「伽をしても構わぬと言っただろう。どこまで許してくれるだろうか」
「許すも何も、我はモラクス様の希望に従うのみです」
「なるほど。では、今からお前に触れる。嫌になったら言ってくれ。すぐに止めよう」
***
「ふむ…、まさか俺の初めてを奪う者がお前になるとはな。我慢しているかと思ったが、随分良い顔で啼いていた。俺の理性を崩すとは思わなかったぞ。今度はお前の意識を飛ばさないように注意をしよう。だから、目覚めたらもう一度お前に触れさせてくれ、魈」