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    kitakaze_g

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    アハキィ

    墓守り「アハウ、渡すのがこんな身体でごめんな」
     力なく笑ったキィニチは数日後に息を引き取った。九十歳を越える大往生だった。
     キィニチはいつ死んでもおかしくない戦闘スタイルだったが、私生活はひどく健康的であった。
     夜明けと共に目覚め、三食きちんと食べて日が落ちると共に眠る。依頼で生活が乱れる時以外は、バランスの取れた食事で、他人にも気を配るほどだった。それ故、ムアラニやカチーナに母親みたいと言われるほどだった。
     だが、どんな依頼でもモラ次第でこなしていたから、早いうちに死んで身体は自分の物になるとアハウは思っていた。だが、手に入ったのはこんなボロボロの身体である。試しに身体に入ってみたら、その身体の使い勝手は最悪だった。
     目は見えづらく、耳も聞こえにくい。動く度に身体はバキバキ鳴り、走ることもままならない。生活するだけでやっとな身体は手に入ったが、この身体で自由に生きていくのは不可能だった。
     若い身体が手に入ればその年齢を維持できたと思うが、老いた身体を若返りさせることはさすがにできない。
     仕方なく、キィニチが残したモラを持って族長に会いに行った。そして、モラと引き換えにキィニチの墓を作らせることにした。
     身体をもらい受ける契約をしていたから、遺言などはなかった。最期まで独り身だったのでその辺りは楽だった。
     だから、勝手に一番高い丘の上に墓を建てさせた。見晴らしが良い方が戦闘時飛び回っていたキィニチに合っていると思ったのだ。
     キィニチの父と同じ墓に入れた方が良いという意見もあったが、あんな父と一緒は嫌だと思い、別の墓を希望していたと勝手に遺言をでっち上げた。
     できた墓は、玄人でないと辿り着けない景色が良い場所に建てられた。これなら、龍の遺物である腕輪を狙った墓荒らしがやってくることも僅かだろう。
     キィニチとの契約で自由は手に入れた。あと欲しいのは自由に動ける身体だ。
     今は燃素がないと動くことができない。だから、墓の側には常燃の種火を作らせた。これで、キィニチがいなくても今の姿で行動ができる。
     貴重な龍の遺物を狙う者は多い。だからこの場所に墓を建てて選別したのだ。手に入れるならある程度の力がある身体が良い。弱い者の相手をするのは面倒だし、そんな奴にキィニチの墓を荒らされたくなかったのだ。
    「新しい身体が手に入るまでは、此処で墓守りをしててやる。感謝するんだな」
     土を被せ埋められていくキィニチの身体に話しかける。一瞬だけ目元が疼き、目の前のキィニチの身体が揺らいだ。
     
     その後、龍の遺物を狙う骨のある墓荒らしはなかなか現れなかった。一族から英雄として讃えられてしまったせいもある。
     だが、封印されている間の方が長い時間だったのでいくらでも待てた。前と同じく一人だが、側にキィニチがいたからかもしれない。
     
     数百年後、龍の遺物を求めてやってきたのは、キィニチと瓜二つの生まれ変わりだった。
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