きみは聖杯にも似た「オベロン!」
部屋の扉が開いたかと思えば、目の前に勢いよく誰かが飛び込んできた。それは俺の名を叫びながら目の前で倒れ込み、ベッドの端に座っていた身体に伸し掛る。
「きみねぇ、いくら自分の部屋だからって……」
「お願いオベロン! 私とイチャイチャして!」
そう聞いて、咄嗟にいくつかの可能性を想定した。
まず、頭上にいる立香に何か異変が起きた可能性。頭のネジが相当数抜けているのか、マスターとしてそぐわない言動を見せている。
次、押し倒されている俺の認識が間違っている可能性。もしかしたら本来の立香がこうした言動をする人物であり、これまでは俺の方が勝手に美化していたのかもしれない。
最後に、お互いが何か幻覚のようなものを見せられている可能性。夢だのレムレムだのが横行しているこのカルデアだ、否定はしきれないのが正直なところである。
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