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    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

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    温泉に行くビジパ。

    #むざこく
    unscrupulousCountry

    湯煙慕情 本当にこの男はどこに行っても大人気である。年配の御婦人に握手を求められると身を屈め、目線を合わせて微笑む。握手された御婦人は女学生のようにはしゃぐ。
    「本当に男前だねぇ」
    「有難うございます、よく言われます」
     この気さくな人柄も人気のひとつで、老若男女問わず人気で、握手や撮影を求められている。
     その「鬼舞辻人気」にあやかりたいと選挙応援の依頼は後を絶たず、未だ「若手議員」の扱いなので党の要請を断ることが出来ない。
     なので、こういうことがままよくあるのだ。
    「明日も……ですか?」
    「ええ……是非とも地区の祭りに出ていただきたくて……」
    「縁もゆかりもない私が、由緒ある地元の祭りに参加しても良いのですか?」
    「勿論です! 鬼舞辻先生がいらっしゃれば、地元の者だけでなく、近隣の住民も集まりますので……」
     時期的に盆休みということもあり、至るところで祭りが開催されている。観光客に加え帰省している若者も多いので、そんな中で人気議員を召喚出来たとなると鼻が高いのだろう。
    「明日はオフですのでスケジュール的には問題ありませんが……」
     タブレットで予定を確認しながら黒死牟は言うが、問題はここに来るまで車で片道3時間以上かかったのだ。今から帰り、翌日も朝から来るとなると自宅に戻っても休む時間がない。
    「この近辺の宿に空きがあれば泊まって帰りたいのですが……」
     無惨が控えめに尋ねる。すぐに観光組合に連絡するが、人気の温泉地で盆休みという繁忙期の為、どこも満室だった。だが、一軒だけ急にキャンセルが出て用意することが出来るという。
    「ここから近い民宿ですが、そちらでも大丈夫ですか?」
    「有難うございます。ここは美人の湯で有名ですからね。楽しみです」
     ニコニコと無惨は微笑む。寝るところと風呂さえあれば何とかなる。それくらいの感覚で無惨と黒死牟は喜んだが、どうやら一部屋しかないので、二人一室になるそうだ。
    「別に良いよな、男同士だし」
    「はい」
     相手は腹心の部下、秘書の黒死牟である。同室でも気を遣うような相手ではない。二人は地元議員のもてなしの夕食をいただいてから案内された宿へと向かった。

     建物は少々古びているが、なかなか趣があり雰囲気の良い宿だった。
     部屋も十畳の和室だそうで、狭い部屋に男二人が縮こまって泊まるわけではないので少し安心したのだが、踏込で靴を脱ぎ、意気揚々と襖を開けた瞬間、二人は固まった。
     最近は人件費削減の為に予め布団を敷いてある旅館が多いのは二人も知っている。だが、和室でぴっちりと並べて布団が敷いてあると、なんだか妙な気分になってしまうのだ。
     間取り的に仕方がない。十畳とはいえ旅館お馴染みの大きな座卓が部屋の半分を占めているので、どうしても布団は並べて敷くしか出来ないだろう。
     無惨は無言で部屋に入り、何か話題を探そうと広縁のカーテンを広げるが、山側の為、青々とした緑しかないのだ。しかも夜は更けライトアップもされていないので、基本的に何も見えない。
     黒死牟も布団を横目に下座に座り、電気ポットにミネラルウォーターを入れ、茶の用意をし始めた。
     大きな溜息と共にネクタイを緩め、無惨は広縁の椅子に座る。別に何も気まずいことはない。同性の秘書と同じ部屋で一泊する、何もおかしいことはないのだが妙に気恥ずかしく、気まずい。
     腹も膨れているので、さっさと温泉に入って寝ようと思っていたが、どうしても並べて敷かれた布団を見てしまう。
     なんだろう、この彼女と初めて旅行に来たような初々しく照れ臭い感じ。湯上りの浴衣姿の彼女にドキッとしたり……、いや、待て、相手は黒死牟だぞ、と無惨の頭の中はぐるぐると様々な思い出が蘇り、いつしか歴代の彼女と共に黒死牟が並ぶという不可思議な光景が浮かんでいた。
    「お茶……入りました……」
    「あ、あぁ」
     いつもと変わらない黒死牟の口調に無惨は我に返り、座卓の前に座った。ふとお着き菓子の横に置かれたルームキーに無惨は目をやった。その視線を黒死牟も追い、ふふっと小さく笑った。
    「懐かしい鍵ですね」
     普段の宿泊先はホテルが多いのでカードキーに慣れてしまっているが、棒状のアクリル製のキーホルダーには宿の名前が刻まれており、そこには銀色の鍵がボールチェーンで付けられている。
    「本当だな」
     無惨は手に取り、部屋の電球にオレンジ色のアクリルキーホルダーを透かして見ていた。
    「今でも時々、昭和感のあるラブホテルに行くと、たまにこういう鍵があ……」
     ずずっとお茶を啜る音が聞こえて、無惨は言葉が詰まった。ふと視線を黒死牟に向けると、眉間に深い皺を刻んで、苦々しい表情でお茶を啜っているのだ。
    「り……ます……」
    「そうですか」
     無惨も静かにお茶を飲み、気まずい空気を何とかしたいと思っているが何も思い浮かばない。今の失言はスキャンダル的な意味で黒死牟を怒らせたと思っているので、余計に気持ちが噛み合っていないのだが、この部屋の気まずさを感じているのは黒死牟も同じである。
     多分、その気持ちのデカさは黒死牟の方が上である。
     無惨がウロウロと室内を見ている間に、黒死牟はさりげなくティッシュとゴミ箱を枕元に移動させているのだ。もしかすると、今晩、一線を越えることが出来るかもしれない。そんな期待に胸を膨らませているのだが、相手はへらへらと他の女と行ったラブホテルの話をしようとしている。歴代の彼女を片っ端から殺してやりたいが、そうなると歴史に名が残るシリアルキラーになれるだろうというレベルで彼の恋愛遍歴は華やかなので、そこはぐっと我慢している。モテる男に惚れた自分の負けである。
    「そ、そろそろ大浴場に行かないか? ほら、23時までって書いてあるし……」
    「いけません。不特定多数の人間の前で裸体を晒すおつもりですか?」
    「いや、でも普段、サウナとかプールに行ってるし……」
    「部屋風呂も温泉が出るみたいですよ。どうぞ、先にお入り下さい。その間にビールを冷やしておきますから」
    「あぁ……」
     黒死牟に強く言われ、無惨は渋々、部屋の奥にある狭い内風呂に向かい、浴槽に湯を溜めている間に体を洗うことにした。
    「無惨様、籠にバスタオルと浴衣を入れておきますね」
    「あぁ、助かる」
     ドア越しに返事をして、無惨は少し熱めのシャワーで髪を洗い流していた。
     その間、黒死牟はどうすればそういう雰囲気になるか、布団を更に近付け、枕の位置もさりげなく近付けながら、部屋の照明を落とし、じっと策を練っていた。
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    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
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    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
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