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    嗟弓@ A29393221

    @A29393221

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    嗟弓@ A29393221

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    本当になんでもない日常の話 その日常でプロポーズする話 会話珍しく多め
    ハッピーエンドです 他サイトに掲載済み

    #腐ルーロック
    rotatedLubeLock
    #潔蜂
    #プロポーズ
    (marriage)Proposal

    ゆびわ「指輪が二点…お間違いないでしょうか?」
    宝石店の店員が上品な紅い小箱二つ、銀のトレイに乗せこちらによこす。開かれた箱の中には、一つづつ指輪が入っており、正面には小さくも美しい宝石がそれぞれ二つはまっている。一つの指輪に二つの宝石、という少し変わったデザイン。もちろんオーダーメイドだ。はまっているのはペリドットとダイヤモンド。
    「はい、確かに」
    「袋をお付けしましょうか?」
    首を横に振ると、店員は「左様ですか」と微笑み、指輪の入った小箱を手渡しでこちらによこす。
    結婚式の人気シーズン、ジューン・ブライドを三ヶ月後に控えた宝石店のあちこちで、結婚指輪の販売が最盛期を迎えていた。
    今日、今、俺が購入した指輪も結婚用のものだった。俺と蜂楽の誕生石のはまった結婚指輪。前記どおりのオーダーメイドで一点もの。受け取り即日で渡すのは申し訳ないが、これ以上待てなかった。蜂楽の左手薬指に何もついていないのが。
    行為中に何度も、噛んで痕を付けたが翌日には消えるのがオチなのが悔しい。
    今日、俺は蜂楽にプロポーズをする。同性婚が認められたのはつい最近であった。プロポーズが成功すれば、晴れて蜂楽と夫婦になる。最もプロポーズが成功すれば、の話だが。
    店員に見送られながら宝石店を出る頃には、すっかり暗くなった空を街灯が照らしていた。人気の多い歩道を一人、歩く。早くも心臓は鳴っていた、うるさいくらいに。事実うるさかった。
    『新郎、あなたは彼女を妻とし、健やかなるときも、病めるときも———』
    街中なこともあり、他の宝石店でも結婚指輪の広告をデカデカとしているのは、すぐに目に入った。大型モニターに映し出されるウエディングドレスを着て幸せそうに新郎と見つめ合う新婦。そこに蜂楽を当ててみると、自分が目前に控えた幸せなビジョンと重なった。いや、それ以上に美しく幸せなのかもしれない。
    そう思うと、心臓もいくらか静かになり、足取りも軽くなった。

    ----------

    駅近の良物件マンションが、現•我が家。
    今更だが、結婚すると蜂楽の苗字は潔に変わる。今まで蜂楽を下の名前で呼んだことは、行為中に指で数えられるくらいしかない。…廻、めぐる。改めて思うが、実にいい名前だと思う。口に出すと慣れずどこか、こそばゆい。
    「めぐる」
    思わず口に出してみるが、やはり違和感を感じ口角が上がる。
    「もー!潔、一人で笑って変なの」
    「?」
    マンション自室の玄関扉前で一人かと思っていたが、いつの間にか扉は開いており、エプロン姿の蜂楽が顔を出していた。
    「にゃははっ!」
    「うわっ!?」
    聞かれた?最初に頭に入ってきたのは、恥ずかいことに自分の心配だった。調子に乗りすぎた、自己反省を脳内で済ませ蜂楽に弁解をしようと焦る。しかし、俺が口を開くより先に蜂楽が口を開けた。
    「おかえり、潔。早く中入っちゃって」
    開けかけた口を閉じる。幸いにも聞かれてなかった様で、蜂楽は玄関扉を開けてそのままキッチンへ走っていった。一人玄関に残され、こっそり肩を下ろす。気を取り直し「ただいま」と中に入る。蜂楽はマメなことに、もう一度「おかえり」と返してくれた。
    二年前からだったか?こうして、サッカー選手としてお互い活躍する傍ら、オフシーズン中はこうして3LDKのマンションで、同居する生活を始めたのは。
    靴を脱ぎ上がると、廊下突き当たりのキッチンからは香ばしい匂いが伝わる。
    同居開始時、蜂楽が毎食料理を率先して始めた時は驚いた。
    本人曰く、「やったことないし、得意ではないけど。潔に食べてもらうんだったら俺が作ったものを食べさせたい」らしい。もちろん俺だってそうだが、蜂楽の熱意に負けた。だからせめてもと、買い出しは俺が率先した。
    キッチンでは蜂楽はレシピ本片手に肉を焼いていた。蜂楽は暇さえあれば、本にカジリつくように読み、必要なら付箋や書き込みを入れる。見ていて嬉しい様な、申し訳ない様な気持ちでいっぱいになるのは贅沢な話だろう。蜂楽は蜂楽なりに研究を重ねたおかげか、最近では味も安定してきておりレパートリーも日々増えていく。
    指輪の受け取りついでに買ってきた食材を冷蔵庫にしまうと、フライパン片手に
    「ケチャップ取って」
    と蜂楽の腕がこちらに伸びる。取って渡してやると「ありがとう」と太陽の様な笑顔をこちらに向け、再び料理本に目を落とす。
    程なくして、食卓いっぱいに料理が並んだ。さっき焼いていたのは新メニューのハンバーグらしくで、今日のメインだ。ハンバーグの皿の横には、すっかり味の定着した麻婆豆腐が添えられており、贅沢な内容。蜂楽は早々に椅子に腰掛け、箸をとり「いただきます」と丁寧に手を胸の前に添えた。俺も同じ様に手を胸の前に添えると、料理に手をつける。
    季節の野菜を使ったサラダは凝っており、野菜が星型にくり抜かれていた。蜂楽らしく、思わず口角が上がる。口に入れてみると
    「うまっ」
    思わず感想をこぼす。「そーでしょ、そーでしょ」と胸を張る蜂楽。新メニューのハンバーグもしっかりできていて、「いいね」と感想を伝える。しかし蜂楽は完成度に満足していないらしく、来週も作ると息巻いていた。
    こうして食事をすすめていると、蜂楽は思い出した様に口を開いた。
    「そーいえば、今日みんなからお裾分け沢山もらったんだよね。」
    「みんな?」
    「うん、凛ちゃんとか國神、お嬢に馬狼…あ、我牙も」
    指を折りながら、懐かしいメンツの名前を上げてく蜂楽。言い終わると蜂楽が指を向けた先には、大量の紙袋の山があった。
    口には出さなかったが、なんとなく察しはついた。おそらく、プロポーズ祝いだろう。指輪の相談をした千切はまだしも、他のブルーロックメンバーにまで話が回ってると考えると、少し恥ずかしい。
    「凛ちゃんはもずく一箱と、缶詰。パイナップルの。お嬢は買いすぎたってかりんとう饅頭一箱。我牙は親友の皮?ってやつ。多分、いや絶対熊の」
    最後に「記念日とかじゃないのに、みんな変なの」と付け足し、膨れる蜂楽。
    「何なんだろうな」
    とりあえず、とぼけておくことにした。今は何でもない普通の日曜日だけどこれから俺が特別にする、と心な中で恥ずかしいくらいにイキリ散らかす。残っていた麻婆豆腐を冷めないうちに口に詰め込み、食器をシンクへ運ぶ。蜂楽も続いて食器を運んでくる。いつもならここで俺が食器を洗うのだが、今日は少し違う。
    「ケーキ、買ってきたんだけどさ」
    頬が緊張で少し赤くなっているのが、自分が一番にわかった。なんなら、声も少しうわずっている様に思える。
    しかし蜂楽はそれには気づかず「マジ?!」と目を輝かせている。ロウソクもついてるから、とライターを取ってくるよう指示し再び椅子に腰を下ろす。ケーキがあるのは本当で、少しいいところのケーキ。ちなみに玲王行きつけの。
    蜂楽が軽いスキップで戻ってくる。テーブルには小さめのホールケーキを置き、一本だけロウソクを立てておく。
    「火、つけていい?」
    コクリと頷くと、目を輝かせてロウソクに火をつける蜂楽。気を利かせて部屋の明かりを落とすと、ロウソクの明かりだけになる。子供のようにロウソクの火を見つめる蜂楽の前に座る。
    心臓がうるさい、息が詰まる、胃が辛い。緊張の3コンボを決めた自分の体調だったが、試合前とは少し違う緊張のしかたをしていた。俺は蜂楽にプロポーズする。今、これから。すぐ。
    そう思うと肩に力が入る一方だった。

    -----------------------------

    プロポーズといえば、綺麗な夜景を背景にちょっと高いレストランでするイメージが強い。が俺達には、背伸びをせず日常に含んだ方があっていると思う。少なくとも俺はそう思う。なんせ、告白だってそうだった。特別綺麗な海や、非日常的なテーマパークではなく、二人で気まぐれに行った散歩途中で。

    夜なこともありカーテンの隙間から何も入ってこない。一室はロウソクの明かりだけだった。今にも火を吹き消したそうな蜂楽に待つようにお願いする。ポケットから隠し持っていた指輪の入る小箱を、一つ。テーブルにおく。
    最初はケーキに夢中だった蜂楽も小箱の存続に気づいたようで、不思議そうに俺を見つめる。
    言い出しはこうだ

    「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、あなたを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓います。」

    結婚式で神父が新郎新婦に問う文章を丸パクリして、回答しただけだが、いい。これに伝えたいことは全部詰まってる。

    「蜂楽、俺と結婚して下さい。絶対幸せにします」

    そう言い小箱を開ける。そこには二つの石がはまった指輪があった。
    石の名前はペリドットとダイヤモンド。ペリドットは蜂楽の誕生石、石言葉は夫婦愛。ダイヤモンドは俺の誕生石、石言葉は変わらぬ愛。
    ケーキに立ったロウソクの火がが揺れる。思わず目を閉じて返事を待ってしまう。
    言葉は練習どおり言えた。イキリすぎたか?文章おかしかったか?それとプロポーズに気づいてないとか?悪い予想ばかりか頭に浮かんでは消えていく。今ばかりは時光にネガティブ思考勝負で勝てそうな、いらない自信すら湧いてくる。
    そうして目を閉じていた時間がどれくらいだったか分からないが、蜂楽の声が聞こえてくるまでは相当な時間がかかった。
    返事が来る気配がなく、恐る恐る目を開けてみると———蜂楽は泣いていた。
    机に涙が落ちるくらい、真っ直ぐに顔をこちらに向けて。呼吸を忘れたように鼻をすすらず、ただいま涙を落とすだけ。
    そんなに嫌だったか?と顔を真っ青にしたが、それより蜂楽をどうにかするほうが先と判断した。
    どこか、何か、取り繕えないかと頭を回す。しかし、言葉を発する前に、やっと鼻をすすった蜂楽が口を開けた。

    「はい、よろこんで」

    いつもと変わらず、太陽の様な笑顔で俺に笑いかける蜂楽…改めて、廻。
    とっさに指輪をとり、廻の左手薬指にはめるとそこには夢に描いた光景があった。

    一つの指輪に二つの宝石

    ペリドットとダイヤモンド

    こうして廻は晴れて俺と夫婦になった。
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