相合傘 ビルの窓から見える外界は土砂降りの大雨だった。これはニキの傘でも無断借用しなくては無事に帰れまいと一人頷いて傘立てに足を向けた燐音は、ふと視線を向けた先、軒下で浮かない顔をしている青年を見つけた。この湿気で、どことなく彼の髪もいつもよりボリュームを増している気がする。なかなかまとまらなくて大変だろう。身に覚えがあるので勝手に同情しておくこととする。
青年は手に閉じた傘を二本持っていた。中に入らずに待っているということは、そろそろ待ち人も現れる頃合いなのだろう。その人物には心当たりがあった。今の今まで同じ現場で仕事をしていたのだから当然だけれども。
(こはくちゃんが出ていく時間をずらそうとしてたのはこういうことだったんだなァ)
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