いつか僕らは屋根より高く 青空を、気持ちが良さそうに鯉のぼりが泳いでいる。布が空気をはらんで、風に翻ると音をたてて、勢い良くその尾が青を往く。
雲一つない快晴である。遮るもののない青空はさぞ泳ぎやすかろう。平屋の民家、その庭先に鯉のぼりはあった。風にはためくのぼりに、視線は吸い寄せられた。
行事としては知っているが、こはくにとっては見慣れない風景である。男児が健康に生きながらえていることを隠さねばならなかった家だ。縁遠いものであった。
ロケバスの中から見えたその光景は、夜になってもどういうわけか頭から消えなかった。スマホの検索画面に「鯉のぼり」と入力して、その由来などを調べてみてもピンと来なかった。
(真鯉、緋鯉、青鯉……揃って家族を表す……)
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