セレブリティ・チャイルドの舞踏曲「イデア先輩、見てください! すごくないですか?」
拙者の部屋に突撃してくるなりかつてないほどウキウキのルンルン顔で君がお子様ランチを見せつける。旗が立てられたハンバーグにエビフライ、スパゲティ、そしてさくらんぼが乗ったプリン。確かに王道のお子様ランチだ。旗が何気にイグニハイド寮章なのは笑うけど。しかもクオリティめっちゃ高い。手が込んでいるに程がある。だかしかし。
「なんでそんなに笑顔なんです? 君、僕より年下とはいえお子様ランチにキャッキャする年ではないでしょ」
拙者のもっともな指摘にやれやれと言わんばかりに君が肩を竦めた。は? 何その態度、ムカつくんですけど。
「ロマンですよ、ロマン。イデア先輩も男の子ならわかるでしょう」
「君、女の子じゃん。つかお子様ランチに何のロマンがあるわけ?」
「そこはノリと雰囲気でフワッといきましょうよ」
「いや知らんし。人に理解を求めるなら説明してくれん?」
「えー。イデア先輩、食べたことないですか? 童心疼きません?」
「…………ないよ」
そもそも食事なんて胃に入れば全部一緒だし、興味もない。栄養が取れればいいんだからブロックで充分でしょ。
「じゃあ折角なのでお裾分けしますね」
「何が〝じゃあ〟なのかまるでわからんが!?」
「美味しいものはわけっこしたくなりません?」
「いや別に……」
「私はなるのでお裾分けしますね」
「いや要らんが………ってわかった! もらう! もらうから突きつけて来ないで!!」
ぐいぐいと皿を突き出して来る君にたまらず了解してしまった。拙者に拒否権ないんか? そもそも食事に興味がない人間を巻き込まないで欲しいんですけど。
「はい、あーん」
「ファッ!? じ、じじじ自分で食べるんで結構です!!」
「あーん」
「圧が強い!! ええいやめんか!!」