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    suno_kabeuchi

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    suno_kabeuchi

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    i7/SS100本ノック8本目
    モン天のお悩み相談室

    ##i7_SS

    とくべつ〝おやなみ〟そうだんしつ ソファの定位置から物憂げな面差しでうっそりと窓の外を眺めているその姿はとても美しいと思う。耳をぴこぴこさせながらモン天は天を眺める。憂いを帯びたローズクォーツの瞳は夕陽を受けてきらきらしているけれど、どこか朧げにも見えてモン天はくいっと体を捻った。
     てちてちと天の傍まで近寄れど、そのローズクォーツがモン天に向くことはなかった。ただただ窓の外を見つめている。
     何か面白いものがあるのだろうかと同じように窓の外に顔を向けるも、いつも通りの綺麗な夕焼けが広がっているだけだった。昼と夜の一瞬の隙間。ごく僅かにしか見られない空の風貌。青い空の時はぴかぴかの太陽がこの時ばかりは真っ赤に燃えているのを見てびっくりしたこともある。火事なのか、と天を問うて「火事じゃないよ。あれはお日様の衣装替え」と教えてもらったのは懐かしい記憶だ。
     あの時の天はこんな風にぼんやりとしていなかった。少なくともモン天がこれだけ近くにいて気づかないなんてことはなかった。モン天は短い手を顎に添える。考えること暫し。ぽくぽくぽくぽく。ぴーん!
     名案を閃いたモン天は善は急げとばかりに素早く行動を開始した。

    ※※

     ふとモン天が自分を読んでいる声がして、天は意識の焦点を現実に合わせた。
     あまりにも綺麗すぎる夕焼けに陸の髪色を、そして今の姿からは想像できないほどかよわかった頃の弟を想起してしまってつい感傷に浸ってしまった。
     今は同じステージの上で何時間も歌って踊れるくらいに強くなった、天の初めてのファン。七瀬天の、唯一のファン。
     今の自分は九条天で、その生き方に何ひとつ後悔なんてない。九条天を愛してくれる人がいる。信じてくれる人がいる。そのことに喜びこそ覚えど、苦しみなどない。胸を張ってそう言い切れる。
     それでもふとした拍子に道をわかった弟の姿を思い出す。二度と道が交わることがないのだと認めたのは自分自身だけれど、納得もしているけれど、それでも何も思わないではいられないのだ。
     ボクもまだまだだな、と苦笑して頭を切り替える。天を呼んだモン天へと体ごと向けた。
    「モン天、呼ん、だ………………」
     なにこれ。
     それまでの感傷も何もかも吹き飛ぶモン天の姿に天は思考回路ごと固まった。当のモン天は机の上でふんすと胸を張っている。その顔はとても得意げである。
    「……おやなみそうだんしつ?」
     自作らしい襷に書かれた文字をなんとか解読して読み上げれば「そのとおり!」と言わんばかりにモン天が自分の胸を叩く。持ってきたらしいお気に入りのクッションを机の上に置いてもすりと腰掛けた。「さあ、なんでも話したまえ」。そんな副音声が聞こえてきた気がした。
     目を瞬くことしばし。じわじわとモン天の気遣いを理解して天は相好を崩した。
    「ありがとう。それじゃあボクの〝おやなみ〟を相談させてもらおうかな」
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    suno_kabeuchi

    TRAININGtwst夢/イデア・シュラウド
    集中している間に髪と戯れられてるはなし
    待てができるいいこなので ゆらゆらとゆらめくサファイアブルーを見つめること数十分。幸いにしてプログラム生成に集中しているイデア先輩に気取られることもなく、私はじっくりとっくり拝ませてもらっている。
     ほう、と何度目かもわからない感嘆の息が漏れる。昼だろうが夜だろうが、常に薄暗いイデア先輩の部屋ではそのサファイアブルーが陽の下のそれよりも鮮やかに映る。彩度の高いそれは驚くほど瞼に焼き付いては目を伏せてもその名残で閉じた視界に青が散る。
     足首まである長いそれはいざ座ると殆どが背凭れと痩躯の間に隠れてしまうけれど、一筋二筋と零れ落ちるそれもある。カーペットに座っていたけれど、そろりそろりと近づいて音もなくそれに手を伸ばす。燃えているだけあって毛先こそ掴めはしないが、もう少し上の方であれば実体がある。指に絡ませてみれば鮮やかな青に照らされて私の肌が青褪めたように光を受ける。視線だけイデア先輩に向ける。足元にいる私に気づいた様子もなくブツブツと早口で何か捲し立てながらキーボードを叩いている。それに小さく笑みを零して指に絡ませたそれに唇を添える。殆ど何も感じないけれど、ほんのりと温かい気がした。
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