拝啓、お天気お姉さん『ラッキーアイテムはピンクの小物! 今日は最高の一日になる予感! わくわくしながら過ごしてくださいね!』
テレビ越しのお天気お姉さんがにこやかに告げるのを聞いて期待値が上がっていたのはその通りだ。占いを盲信するわけではないが、験担ぎ程度には頭の片隅で意識する程度であってもそれだけポジティブなことを力説されれば少しばかりその気になろうというもの。間下高良はそういった素直さを持ち合わせている男である。
なので。九条天の概念として部屋に飾っていたスモーキーピンクのキーホルダーを家の鍵に取り付けていたら登校時間ギリギリになって慌てて家を飛び出すことになっても、ついでにスマートフォンを忘れても、通学路で瞬間的なゲリラ豪雨に見舞われても、一限の講義で突然抜き打ちの小テストが始まっても、二限の講義で提出物を忘れたことに気づいても、昼休みに目の前で日替わり定食が完売しても、空きコマに作曲に励もうとしたらそのデータを破損しても。
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