おいしいのまほう「うーん……作りすぎちゃったな」
こんもりとフライパンの上で山を作っている焼きそばを見ながら龍之介は首を掻いた。定期的に行われる『冷蔵庫一掃キャンペーン』で文字通り賞味期限切れ間近なブロックベーコンや傷みそうな野菜を纏めて消化しようと拵えた夕飯。想像より量が膨れてしまい、三人とモンたちで食べるにしても確実に余ってしまう。
「明日食べればいいんだけど、折角だったら何かアレンジしてあげたいな」
うぅん、と首を捻ってキッチンを探る。六枚切りの食パンが未開封で発見された。閃いた。
早速とばかりにホットサンドメーカーを取り出し、食パンをセットする。スプーンで中央を軽くへこませ、その中に焼きそば山の一部を移動させてもう一枚の食パンを被せる。そのままホットサンドメーカーの上蓋を閉じて留め具で固定する。フライパンが乗っていないコンロに火をつけるとその上にホットサンドメーカーを置いた。
その間に今晩の主食を手際よく盛り付けていく。夜分になるから麺は控えめに、その分野菜と肉を多くよそった。合間にホットサンドメーカーを引っ繰り返し、上下で焼き目が偏らないように注意を払う。
「あ、みんな来たんだね。もうできるからちょっと待ってて」
足元にちょろちょろしにきたモンたちを後退させるとホットサンドメーカーの留め具を外して上蓋を開く。こんがりと狐色の焼き目が綺麗についていて、龍之介は満足気に微笑むとコンロの火を止める。
焼きそば山の分解に使っていたトングで皿の上に移し、パン切り包丁を対角線に入れていく。ふわぁ、と湯気が立ち上るその断面にはみっちりと具沢山の焼きそばが姿を現した。
「うん、いい感じになった。後で残りの食パンを使って朝ご飯用に作ろうかな」
龍之介の独り言に「さんせい!!」とばかりにいつの間にか再び足元にやってきていたモンたちが纏わりつく。特にモンてんの口からは涎が出ていた。龍之介の肩の上からまっすぐに焼きそばホットサンドを食い入るように見つめている。
これはもしかしたら足りないかもなと思いつつ、明日はオフなので起きたら食パンを追加で買いに行こうとモンてんの涎を吹きながら龍之介は明日の行動計画表を脳内で構築した。