氷爪洗脳 日差しが強く照り付ける昼下がり。遠くのアスファルトには蜃気楼が見える。
「あつすぎでしょ……」
普段同じくらいの位置にある先輩の頭はがくんと項垂れていて、うなじには白い粉みたいなものが付着していた。
「元気ないですね」
「あるわけなくない?」
いつもなら向こうから話を振ってくるのに、今日はむしろお断りな感じらしい。顔も上げずにぴしゃんと言い切った先輩はまた黙り込んだ。
「……」
「…………」
沈黙が落ちる。心なしか、さらに日差しが強まったような気がする。俺は意味もなく先輩のうなじを眺め続け、あ、この粉日焼け止めだ。
先輩は肌が弱いから、少しでも焼けるとすぐに赤くなって痛み出すらしい。粉が残っているって多分きちんと塗れてないってことだけど、平気なんだろうか。
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