不思議の国の94 第24回半サギョお題集です。
「アリスパロディ」
「そんな相談しに来るな!」
シン.クイノベ.ーション様のアリスver.です。
黒リボンロナルドくん。
赤の女王ドラルク。
ウサギジョン。
マッドハッター半田くん。
+ + + + +
眠りネズミ鼻息丸の代わりにゴビー。
三月ウサギのサギョウくんが登場します。
ロナドラメインじゃね? と思われたり、ドラルクが食べ物を食べたがります。コンプラ違反が嫌な方はサヨナラ!!
◆ ◆ ◆
ウサミミを付けたアルマジロを追いかけ穴の中。同じくウサミミの様な黒いリボンを頭に着け、筋骨逞しい体をシンプルな水色のエプロンドレスで包んだロナルドは、どうやってその地位に上り詰めたのか分からない程虚弱な赤の女王ドラルクが支配する不思議の国へと迷い混んでしまいました。
帰り道を探すため道中で出会った変わった住民達。食べ物を食べて体が大きくなったり小さくなったりと、ヘンテコな出来事に驚きの連続でした。
最終的に女王様の作る料理が美味しすぎてロナルドは不思議の国に留まることにしたのです。
そんなある日。
今日も気持ち良く自分の作った料理を美味しそうに食べているロナルドとジョンを見てドラルクは言いました。
「たまには君たちが作った料理を食べてみたいな」
と───。
と言うわけでロナルドとジョンはお城の調理室に居ました。
「料理ってもな…」
ロナルドは専ら食べる専門なので、どうしようかと迷います。
「でも、これだけ色々材料があれば俺らにも何か作れるんじゃね?」
「ヌァー?!!」
ロナルドの余裕の発言にジョンは驚きを隠せません。
「そうだ! クレープとかどうだ?」
以前開催したクレープパーティーが楽しかったのでロナルドはそう提案しました。
「ヌェー…」
ジョンはアルマジロの耳を下げてこの後の展開を諦めました。
ハンドミキサーで材料をドルドルドルしたら、何か分離したきったねぇ物が出来上がりました。ジョンは『有罪』と書かれた紙を掲げます。
「ジョン…有罪。有罪、ジョン」
ロナルドは悲しみにうちひしがれます。
自分たちでは料理が出来ない事を悟り、不思議の国の住民達の力を借りる事にしました。さて、誰を頼りましょう?
「ヌヌヌヌンヌ?」
「フクマさん?」
想像してみます。
ヌトヌト蠢く蛸の足からは幾つもの目玉が此方を見つめます。食べ物の筈なのに、活け造りでは無い筈なのに、どうして生きていると感じるのでしょう。何だかサイコロを振らなければいけない様な気分になってきました。▼1D6
「だっ、駄目だ!! 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているみたいな食べ物が出来そうだ!!」
「ヌァー!!」
それは大変。いくら不思議の国とは言え更に常識が通用しない場所から生まれでた物を見たらドラルクは驚いて死んでしまいそうです。
「ヌヌイヌヌン」
「ヒナイチは…」
想像してみます。
『美味しい! 美味しい!!』とクッキーを貪るクッキーモンスターが現れました。ヒナイチもロナルドとジョンと同じ食べる専門のようです。
「後は…」
ロナルドは腕を組んで大分渋い顔をします。
「アイツなら…」
窮地を乗り越える方法を知っていそうな人物が頭を過りました。
「それで俺の所に来たと言う訳か!! ロナルド!!」
頭に黒のシルクハットをかぶったマッドハッターの半田がセロリ茶を淹れながら言いました。
「ううう~。セロリ臭い…」
ロナルドはセロリが大分嫌いでしたが、半田はセロリが大好きでした。ロナルドが此処を訪れるにはセロリを我慢するしかありません。セロリ茶の匂いはあまり息を吸わないよう心がけ、ジョンガードで身を護ります。
「そうなんだよ。なぁ、半田。俺に料理の作り方を教えてくれよ」
頭は下げたくないけれど、まともな料理が作れるのは半田くらいしか思いつきません。ロナルドとジョンはドラルクのお願いを叶えてやりたいのです。
けれど半田は、ジョンの前に静かにセロリ茶を置き、ロナルドの前に乱暴にセロリ茶を置くと、
「そんな相談しに来るな!」
冷たく言い放ちました。
「ウエェーーーン!! 何でだよォ!!」
頼みの綱の半田にバッサリと断られセロリ茶の雫もスカートにかかりロナルドは泣いてしまいます。
「全くこちらは三月ウサギのサギョウと仲良し(意味深)するのに忙しいと言うのに…」
どうやら半田は三月ウサギのサギョウとの仲良し(意味深)を中断され怒っている様でした。
「悪かったって~(分かっていない)」
ロナルドは半田の怒りが分かりませんが謝ります。
「先輩、そんな事言ったら可哀想ですよ」
「サギョウくん!!」
そこに、今までティーポットの中に居るゴビーを構っていたサギョウが助け船を出しました。
「僕たちは何時だって、365日仲良し(意味深)出来るでしょう?」
「むぅ…。分かった」
意味深な会話がさりげなく展開され、分かっていないのはロナルドだけでした。
「ヌヤン」
ジョンが頬を染めます。
「料理教えてくれんのか?!」
「セロリ茶とセロリクッキーの詰め合わせ。三千円だ」
緑が鮮やかなお菓子缶が差し出されました。
「ちっがーーーう!!!!」
「何だ。何が違う。賞味期限はまだ先だぞ」
「出来合いのじゃなくて、俺たちが作ったモノをドラルクに食わせてぇんだ」
「ほぉう?」
「駄目か…?」
「良かろう! ならば特別にこの俺が、お前に料理を教えてやる!!」
「ありがとう! 半田!!」
「セロリクッキーとセロリケーキ。セロリゼリーにセロリのババロア。まだまだあるが、何を作る?」
「バッバロボッバロバーーーーー!!!!」
原材料のセロリ(生)を見せられて、ロナルドは悲鳴を上げました。
「僕はゴビーと遊んでますね~」
半田が料理を作れるので、サギョウも食べる専門の様でした。長い長いテーブルでかくれんぼするゴビーの鬼役を務めます。
「ゴビーは何処かなぁ?」
ゴビーが隠れたポットがカタカタと揺れています。サギョウはそれに気付かないふり。
「ゴビー、出てきてよ~」
ポットはますます小刻みに震えます。
サギョウとゴビーのやり取りを視線の端に捉えロナルドは初めて此処を訪れた時の事を思い出していました。
ティーポットに寄りかかりイビキをかいていたドラルクに似たコウモリの代わりに、今は一つ目五本足のゴボウのゴビーが居ます。
「ところで、お茶会のメンバー代わったのか? 前は変なコウモリが居たじゃん?」
それを耳聡くサギョウが聞きつけ、
「ゴビーが居るところに僕が居て、僕が居るところにゴビーが居るんですよ!! 何か問題でも?!」
普段眠たそうな目を押っ開き、足をダンダン踏み鳴らしサギョウは言いました。
「ヒェッ!! ありません!!」
『ギィィー!!』
ポットに隠れていたゴビーも飛び出し抗議します。
「なぁ、半田。サギョウくんってあんな感じなの?」
こそりと耳打ちします。
「いや。サギョウはゴビーの事となると突然強火担になってしまうのだ」
「そっかぁ…」
ロナルドはサギョウの意外な一面を知りました。
なんと言うことでしょう。『ロナルドがハンドミキサーで材料をドルドルドルして出来た、何か分離したきったねぇ物』は半田の手によってクッキーへと生まれ変わったのです。
「ウォォ、スッゲー!! クッキーだ、クッキー!!」
「ヌッヌー♪」
『ギィー♪』
ロナルドとジョン。ゴビーまでもが出来映えに喜びます。
「クッキーの匂いがする!! ちん!!」
「なにやら皆さん集まって楽しそうですね。良かったら私も仲間に入れて下さいませんか?」
賑やかな声に誘われ、チャシャ猫のヒナイチとイモムシのフクマさんがやって来ました。
「さぁ、ドラルクを呼んで来るが良い! お茶会の再開だ!!」
新たな客人にティーセットの用意をして半田が言いました。
「それなら、私が」
「イャアァァ!! 黒がマーブル模様!! 何々何ィ!!!!」
フクマさんの転移術であっと言う間にドラルクはお茶会へと招待されました。
「あれ、ここは半田くんのお茶会? え、皆さんお揃いでどうしたの?」
「ん!」
ズイッと目の前にお皿に乗ったクッキーが出されました。
「これは…」
「ん!」
ドラルクが戸惑っていると、もう一度ロナルドがお皿を近付けます。
「カ○タくんか、君は。一文字以上を喋れ」
「ヌヌヌヌヌヌ! ヌヌ ヌッヌーヌ、ヌンヌ ヌヌヌヌヌンヌ ヌヌッヌンヌ!!」
「これを、君とロナルドくんが?」
「そーだよ」
「ヌン!!」
「クッキー生地へと再生させたのはこの俺だがな!!」
「えっ? 前は何だったの?」
「野暮な事は言わないんですよ」
『ギィー』
ロナルドとジョンは、輝く瞳でドラルクの言葉を待っています。
「ありがとう。とても嬉しいよ」
「ッシャー!!」
「ヌーイ!!」
ロナルドとジョンはドラルクに喜んでもらえてその場で跳び跳ねました。
「クッキー美味しい! クッキー美味しい!!」
「ヒナイチ、お前、食べ過ぎんな!!」
「ヌイシー♪」
「はい、ゴビー。あーん」
『Delicious!』
「このクッキー。ちょっと猫に似ているかもしれません」
ドラルクがクッキーを食べているみんなを眺めていると、隣に半田がやって来ました。
「お茶のおかわりはどうだ?」
「うむ。いただこう」
鷹揚に頷きます。
「どういう風の吹きまわしだ? 料理を食べたい、などと」
「だって私、赤の女王だもの。我が儘を言うさ」
ドラルクは不思議の国を治める女王なので、虚弱ではありましたが死ぬことはありませんでした。残酷に言うと、不思議の国を存続させる為の人柱だったのです。
「私はね。今がとても楽しいんだよ」
ロナルドが不思議の国へ迷い混むまで、ドラルクはジョンとそれなりに楽しい日々を送っていました。しかし、豪華なお城と高い地位に居ても何処か胸の中にすきま風が吹いていたのです。半田はそんなドラルクを友人として心配していました。
そして遂に在るべき者が側に来て、漸くドラルクは本当の笑顔を取り戻しました。
半田としては何故だか無性にセロリを使って悲鳴をあげさせたい相手ですが、ドラルクが喜ぶならロナルドの事を認めてやっても良いと思うのです。
友人同士のふざけた冗談としてドラルクが言いました。
「良かったら、赤の女王の座を譲ってあげようか?」
それに対して半田は、
「いいや。俺はセロリは緑色の方が好きだからな」
可愛いマスコットと戯れる、愛しい緑の髪の毛を眺めながら答えました。