【●●しないと××される部屋診断結果】
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官ナギは「協力して天井の電球を取り替えないと、謎の力で赤面させられる部屋」に閉じ込められました。
■カンタロウくんの身長体重捏造があります。
■ナギリさんそんな重くないよ! むしろ平均体重より軽くあって欲しい!! と思って書きました。
■犬津の94好きカプで出られない部屋の第一弾話です。
辻田さんの体重が○○㎏って本当でありますか?!
「辻田さん! 大変であります!! 我々は、『協力して天井の電球を取り替えないと、謎の力で赤面させられる部屋』に閉じ込められてしまったのでありまあああああ」
「ンガアァァ!! 新横浜のポンチ吸血鬼の仕業かぁぁぁ!!」
カンタロウと出会う度出会う度、何かしら厄介な出来事に巻き込まれる辻田はフードの上から頭をかきむしり絶叫した。
今回も毎度お馴染み辻斬りパトロールと称し手を引かれ、新横浜中を走り回り気が付くとこの部屋に閉じ込められていたのだ。
「何でだこの馬鹿歩く騒音飛んで火に入る夏の虫とはお前の事だ間抜け!!」
「辻田さん、すいませんであります!! しかし、市民の皆さんがこの部屋に入らないで済みました!! さぁ、では協力して天井の電球を取り替えここから脱出しましょう!!」
以前だったら、『すいません』の前に『ウェーン!!』と泣き言が付いていたのに、最近では開き直ったのか泣き言を言わずに事態の収拾を提案してくるようになった。辻田に迷惑をかける事を当たり前のように思っているのか。全くもって忌々しいと、心の中で毒づく。血刃が出そうになるのを押さえるのだって苦労するのだ。
「で、どうする? この部屋には上に登る為の物は何もないぞ」
「『協力して』とありますので、肩車などどうでしょう?」
天井も壁も床も白いこの部屋は、突如として新横浜に現れた違法建築物のクセに、室内は律儀にも建築基準法を遵守していた。室内の広さは小、中学校の教室の大きさ。八メートル×八メートル。肝心な部屋の高さは、二メートル五十センチ。
室内の天井中央に目的の電球があり、それ一つで部屋中を十分な程明るく照らしている。その下には、替えの裸電球がコロンと床に転がっていた。先に辻田が言った通り、電球を取り替えろと言う割りに手助けになるものは何も置いていない。不親切なこの仕様は中に入った者を慌てふためかせる為か。
「辻田さんは本官より背が高いので190センチくらいあるのでしょうか」
爪先からフードの天辺までを眺めカンタロウが言う。
「知らん。背の高さなどもう何年も測っていない」
長く放浪生活を送っている身として、身長を測る機会など無かった。それでもカンタロウの見立て通り、辻田の身長は190センチで合っていた。
「ふむ。仮に辻田さんの身長が190センチだとして、本官の身長が185センチですので二人あわせて375センチ! バッチリ天井に手が届きますね!!」
「馬鹿か貴様は!! その計算だと頭の上に乗る事になるだろうが!! そんな雑技団の様な真似出来るか!!」
「はっ! そうでありました!! 肩車でしたね!! では辻田さん、本官の肩にお乗り下さい!!」
それは何の意図もない提案だった。カンタロウにしてみれば、背は辻田の方が高いが体重は体の厚みからして自分の方がありそうだと思ったから申し出ただけの事。だが、それがプライドの高い辻田を苛立たせた。
(はぁ? ふざけるな。こっちは吸血鬼だぞ。お前一人肩に乗せるなんて造作もないわ!!)
「いや、大丈夫だ。俺が下になるからお前が電球を替えろ」
「いいえ。どうぞ、辻田さんが本官の上へ」
「聞こえていないのか? 俺はお前一人くらい簡単に持ち上げられると言っているんだ。だから、お前が、上に乗れ」
「何を言っているのでありますか!! 辻田さん、本官が乗ったらポッキンて折れちゃいそうであります!!」
「折れんわ!!」
しかし、辻斬りナギリの分霊体はパキャッと潰されて折れてしまった事があるし、辻田自身も逆さ釣りになって背骨が折れそうになった事もあった。
どちらがどちらを上に乗せるか。両者は一歩も退かなかった。
「じゃあ、辻田さん、体重はどれくらいでありますか?!」
「だから量っていないから分からないと!!」
「本官の見立てでは辻田さんは86キロはありそうであります!! 190センチの男性の平均体重は1.9×1.9×22=79.4で確かに辻田さんは平均よりは重いかもしれません!! ですが、本官は95キロあり辻田さんより9キロ重いであります!!」
「何、訳の分からないことをワヤワヤと!!」
恐ろしい事に、カンタロウの見立てはここでも合っていた。
「では、辻田さん! このパイルバンカーをお持ち下さい!! こちら、なかなかに重量があります!! それを片手で持って頂けたら、本官が辻田さんの肩に乗りましょう!!」
「だから安易に止めろクズそんな危険な物を振り回すな俺に向けるな馬鹿!!」
ハンマースペースからパイルバンカーを取り出し取っ手を辻田へと向ける。本来であれば、人間も吸血鬼も簡単にボカーンとやってしまえる程の武器を軽々しく扱うカンタロウに、辻田は鳥肌を立てながら罵倒した。
「もう止めて下さい!! 本官の方が絶対辻田さんより重いであります!! 基礎と土台はしっかりした方が良いのであります!! ですから辻田さんは本官の上に乗って下さぁぁぁい!!!!」
「分かった! 分かったから、早くそれを仕舞えぇぇぇぇ!!!!」
カンタロウの迫力に飲まれてしまった辻田はもう面倒くさくなって怒鳴り声をあげて肩車の上になる事を了承した。
「では、改めまして! どうぞであります、辻田さん!!」
「クソッ。お前一人ごとき、どうってこと無いのに…」
ぶつくさと文句を言いながら、辻田は腰を落として片膝を着いたカンタロウの肩に乗った。床に転がっていた裸電球はカンタロウが回収し、壊れないようにコートの内ポケットへ仕舞っている。天井にある電球をソケットから外したら新しい電球に替える算段だ。
「いきますよ、辻田さん!」
「うおっ」
カンタロウは事も無げに辻田を肩に乗せ立ち上がる。
「うふふふ。辻田さんは軽いであります。まるで、羽根がはえているみたいでありますね」
グワシッ
(一端の成人男性に向かって何を言いやがる!!)
苛立った辻田はカンタロウの髪を鷲掴みにした。
「痛いであります!!」
しかし、肩車とはこう言うものなのか。辻田は遠い昔。まだ幼い人間だった頃を思い出した。
両親の間に子供が入り手を繋いだり、背の高い父親の肩に乗りそれを微笑ましく見ている母親。その姿を見て羨ましいと思っていた。自分の背より高い場所から望む景色はどんなものなのか。その憧れが、現在この様な形で叶ってはいるが、見渡す限りは白い風景ばかりだ。もっと違う風景なら、感じ入るものがあっただろうか。
(クソッ。この馬鹿と閉じ込められている最中に、感傷に浸るな!!)
「おい。電球を渡せ」
余計な回想を拭い去り、辻田はカンタロウへ声をかける。
「はい! あ、あああああ!!!!」
「うるっさい!! 今度は何だ!!」
「電球を替えるのに、通電したままではいけません! 本官、うっかりしておりました!!」
「おい…」
嫌な予感がする。そしてそれは、外れた事が無い。
「電気が流れている状態での交換は、感電の恐れがありまあああああ」
「段取りが悪い!!!!」
早くこの部屋から出なければと言う焦りから大変初歩的なミスを犯してしまった。
「すいません、辻田さん。一度、下ろします」
ゆっくりと腰を下げて辻田を下ろしたカンタロウは辺りを見回す。
「あちらにスイッチがあるであります!!」
照明のスイッチは、出入り口のドアの隣に付いていた。
「何と! これでは暗闇の中を肩車で歩かなければなりません!!」
「何でそうなる?! 俺が電気を消してくるから、お前は大人しく此処に立っていろ!!」
「それですと辻田さんが戻って来る時に部屋が真っ暗に…」
「大丈夫だ。俺は夜目が利く」
「いえ、しかし…。あ! 本官、懐中電灯を持っておりました!! 辻田さん、この明かりを目指して戻って来て下さい!!」
(コイツは本当に要らん事ばかりするな)
血液パックの自動販売機のバックライトすら眩しいのに、そんなただ周囲を明るく照らすためだけに作られた物を振り回されたら目がチカチカしてたまらない。辻田はカンタロウの言葉を背に、出入り口のスイッチを押しに行った。
パチン
窓の無い部屋は、明かりを消すと真っ暗になった。成る程。これでは人間の目には暗すぎて何も見えまい。そう思ったのも束の間。
「辻田さーん! 本官はこっちでありまーす!!」
「うるさい眩しい!!!!」
案の定、カンタロウは車でも誘導するように懐中電灯をブンブンと振り回した。
辻田が部屋の中央へ戻ると、カンタロウは懐中電灯を自立させ天井を照らした。眩しい光が下から上へ。吸対の白い制服がぼんやりと闇の中に浮かび、カンタロウの顔に陰影を作る。街角でバッタリ出会ったら悲鳴をあげられそうな様相だった。
「おい。その眩しいのを消せ」
「ですがそれでは真っ暗になって、電球が取り替えられませんよ?」
「良いから明かりを消せ。眩しくてかなわん」
「分かりました」
渋々、カンタロウは懐中電灯の明かりを消した。
「本当に大丈夫でありますか?」
再び、カンタロウが身を屈める。辻田は、明かりが点いていようが無かろうがハッキリと分かるカンタロウの肩に跨がった。
「ほら、乗ったぞ。早く立て」
「はいっ!!」
カンタロウはぐらつかないように顔の両方にある辻田の脛を支え立ち上がる。
「位置はここで良いでありますか?」
「ん…。ああ…」
ところで、辻田は電球など変えたことがなかった。
吸血鬼になってからは先程のように十分と言っていい程夜目が効いたし、微かな月明かりでも辺りは見えたし、必要は無かった。
二重の意味で明るい家庭ではなかった。
天井に埋め込まれている電球とやらは、廃墟に捨て置かれたガラスの丸と似ている様だが、ガラスの丸は天井に埋め込むタイプではなかった。この電球は、一体どうやって天井から外せば良いのか。辻田にはてんで分からない。
だが、それをカンタロウに尋ねるのは癪である。
しかし、万が一にも電球を壊してカンタロウと二人、この部屋に閉じ込められるのはもっと御免だった。頭の中でプライドが天秤に掛けられて大きく揺れていた。
一方、カンタロウは暗闇の中にがっしりと佇み、両肩に辻田の温もりと重さを感じていた。
何も見えない暗闇の中。先程から肩の上に乗った辻田が動かない。やはり、こうも暗くては電球の場所が分からなくなったのではないか。
どうしたのかと声をかけようとしたその時。ふにゅんと首の後ろに、柔らかい感触が当たった。その瞬間、カンタロウの体が大きく震えた。
「おい、土台。しっかりしろ」
「ははははい!!!!」
(辻田しゃんのちんちんがっ!! 本官のっ! 本官の首の後ろにぃぃぃっ?!!)
何故、今気付いてしまったのか。肩車は上に乗った人物の下半身が密着する事に。
意識し出すともう駄目だった。
(辻田さん! 辻田さん!! 辻田さあああああ)
今なら、合法的に辻田の手触りの良い脛に触っていられる。
(辻田さんはちゃんとお風呂に入っているのでしょうか? 石鹸などは使われないのでありますか? 何だか、土の匂いがするであります!!)
「おい。何をしている? 鼻息が荒くないか?」
「辻田さん。生き物は呼吸をしなければ死んでしまうでありますよ」
「は? 何を言い出すんだ、お前は」
(ですからこれは合法!! 合法でありまあああああ)
肩に乗った辻田を支えるために足を触るのも合法ならば、逞しい足に挟まれその間の空気を吸うのだって合法だし、首の後ろに温かな体温を感じるのだって間違いなく合法であるに違いない。
「辻田さん…。あの、まだ電球の交換は終わらないでありますか?」
「うっ、煩い!! 黙れ! その口を閉じていろ!!」
「はいっ!!!!」
(いけません! これ以上口を開いていると、何を口走るか分かりません!! もう黙っているであります!!)
これ以上余計な事を言わないように、カンタロウは両手で自分の口を押さえようとした。しかし、その行動もまた己を窮地に送り込む余計な事だった。辻田を落とさないように添えていた手を口許に持って来る事で辻田の足を支えていた腕の間隔が狭まった。それにより、辻田の両足がカンタロウの頭を強く挟む形となり辻田の内側の太ももがカンタロウの耳にぴったり当たったのだった。
「クソッ! いきなり動くな馬鹿!!」
(~~~~~~~~~~っ?!?!!?!!)
辻田は気付いていないが、カンタロウは黙ってはいるが顔は物凄く煩かった。
(辻田さんのちんちんだけではなく太ももまでが本官に密着しているであります!! あのこれ事故を装い太ももにほっぺたを擦り付けるのはアリでありますか?! ナシでありますか?! いかん本官そんな事!! 本官と辻田さんは辻斬りナギリの捜査協力者と言う関係であって!! それなのに何故、本官はこんなにドキドキしているのでありますか?!!)
(いえ!! ちんちん何て本官にも付いている!! 電車にだってちんちんがありますし、犬さんの狆が庭に二頭居れば狆狆であります!! ヒナイチ副隊長だってちんと言いますし、風鈴だってち(りー)んち(りー)んと鳴るのであります!! だからちんちん何て珍しく無い!! 珍しく無いのでありまあああああ)
「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」
「おい。これ…」
辻田の踵がカンタロウの脇腹を軽く蹴る。
「っひ?!」
それが制服、防刃服、タンクトップを越えて優しい刺激になった。
「」「」「」「」
暗闇で一層、辻田の体温を感じる。
そう言えば辻田は、懐中電灯の光を嫌がった。
(辻田さんは明るいお部屋は好みではないのでありますね!! しかし、本官、辻田さんのお体を余すこと無く見てみたいでありまあああああ)
「」「」「」「」「」
(辻田さんは騎乗位がお好みで?! それでしたら本官も藪傘ではなく!! むしろ、赤く染まったお顔に見下されたい!!)
動揺した辻田がカンタロウの髪を力強く掴む。
「これはどうしたら良いんだ」
「これ、と仰いますと?」
「電球が、引っ張っても抜けん」
「」「」「」「」「」
「」「」「」「」「」
「俺はこう言う事をするのが初めてなんだ」電気を変えること
「初めてなのでありますか?!! そう言う事でしたら本管が手取り足取りお教えいたしあああ!!!!」
「馬鹿かこの状態で手も足も取れるか阿呆!! 大人しくしろ!! 土台!!」
「はっ?! 本官は一体ナニを?!!」
「電球を掴んで左にくるくる回して下さい。電球が外れます。交換する時は、外した時とは逆に右回しに電球をくるくる回して取り付けて下さい」
カンタロウの言う通りにすると、てこずっていた電球は簡単に外れた。
「電球を渡せ」
「はいっ!」
コートの内ポケットから替えの電球を取り出し辻田へ差し出す。
「んっ…。クソッ。入ら、ないっ…」
カンタロウの上に乗った辻田は慣れない電球交換に悪戦苦闘しているようだった。
「つつつ辻田さん! 無理に入れない方が良いであります!! 壊れてしまいますよ!!」
「無理などしていない!! 貴様、俺に入れるのは出来ないとでも言いたいのか?!」
「滅相もございません!! 辻田さんはちゃんとお一人で入れられる事が出来ると、本官信じております!!」
「じゃあ、黙って待っていろ!!」
「っ…。これは…どうなっているんだ」
「良しっ。入って、いるな…」
「ふぅ。どうだ? ちゃんと入ったぞ」
「ありがとうございます」
「」「」「」「」「」「」
「土下座?! 何でだ?!!」
「すいません、辻田さん。本官、これ以上はもう、動けそうにありません。失礼ですが電気をつけて、ドアが開いたか確認して頂けないでしょうか」
「ああ…」
暗闇の中、土下座するカンタロウを不審に思いながらも辻田は危なげ無い足取りでスイッチの元へたどり着き明かりをつけた。一変して明るくなった室内に、カンタロウは白い床と同化するように未だに土下座を続けている。
「何だ、アイツ…」
続いてドアノブを回すと月の光が優しく入り込んで来た。
「おい。開いたぞ」
「ひゃい…」
(本官、親切な辻斬り調査の協力者辻田さんに対して何と言う事を考えてしまったのでありますか!! 確かに以前から辻田さんから目を離してはいけない様な気はしていましたが…。この気持ちは一体…)
訳の分からない部屋から出られ、
珍しく静かなカンタロウを
安堵のまま背後のカンタロウを見ると、その顔は何故か赤く染まっていた。
「何で脱出出来たのに、顔が赤くなっているんだ!!」
「ヒョッ、ヒョッ~ッ、ヒュ~♪ なっ、何故でありましょうね!!」
「何だその下手な口笛は。…口笛、なのか?」
「ヒュ~♪」
完!