師団披露「なぁナルニア。明日お前の家族って来るのか?」
「弟が来る予定だ」
「マジか。ナルニア溺愛の弟初お目見え?」
「安心しろ。見せる気はない」
「「はぁ?」」
師団披露当日。ナルニアは朝早く自宅へ戻ると、出かける準備の出来ているのカルエゴへ神秘の幕を被せ出掛けようかと手を引く。
悪魔学校へ到着するとはぐれたら困るとカルエゴを抱いたまま師団披露会場を歩く。キラキラと楽しげに輝くカルエゴの表情に、ナルニアの表情もいつもより柔らかかった事に気付けた者は居ない。
「兄上の師団はどこですか?」
「あそこはダメだ。お前に害をなすものがいる」
「害?」
「そうだ」
カルエゴを見たがっていた団員の事を思い出し、絶対に連れていかないと決めたナルニアの心知ってか知らずか、通り掛かった師団長がナルニアの肩を叩く。
「何抱いてんだ?」
「一言目がそれですか。失礼します」
「おいおい少しは会話しようぜ」
「私は今は自由時間ですから引き留めないで頂きたい」
弟との時間を邪魔するなら容赦はしない。と言う事だと背後に書かれているようだと師団長の表情がひきつる。邪魔して悪かったな。と去っていく師団長にカルエゴは首を傾げた。
「兄上に用事だったのでは?」
「気にする事はない。カルエゴとの時間を邪魔するものは居ないから大丈夫だ」
何か食べたいものはあるか?と訊ねるナルニアの声に、カルエゴは視線を巡らせる。
その姿にもういっそこのまま永遠に神秘の幕を被せたままで良いのでは無いか。と言う思いは口にせず真剣な表情をしているナルニアを目にした叔父が、また何か危険な思考をしているのかもしれないとナルニアに見つからないよう距離をとった事をカルエゴは気付いていない。
「あ、あれが食べてみたいです」
「わかった」
ナルニアが誰かを抱いたまま師団披露の中食べ物を買っていたと言う話しは知らぬ間に尾ひれをつけて広まったが、本人はそれなら本望だと気にせず噂を流したままにしたのだった。
ナベリウス・ナルニアに本命の相手か
師団披露で共に巡っていた相手の姿を見た悪魔は居ない
二人の時間の邪魔をするなと師団長を一喝
「なぁこれ……」
「一緒に居たの絶対弟だろ」
「間違ったことは書かれていないからな」
どこか機嫌の良いナルニアに、事情を知る団員は口を噤んだ。